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 アニメ『アイドルマスター シンデレラガールズ(公式サイトニコニコチャンネル)』第24話「Barefoot Girl.」の感想です。

 ネタバレ注意です。
 ◇◇◇

 凛、未央を中心に、各々が独立活動をしてさらにキラキラしていく中、そのキラキラに相対的に自身の輝きが翳ってみえてしまうごとくなのか、卯月は自分自身もみんなのようにキラキラしたものを持っているのか、そういう存在になれるのかと鬱(って言葉使っちゃうけど)になるという展開。

 要所要所で第1話(感想)のこの作品の起点になってる「閉じたレッスン室に一人きりの卯月」が使われているように、卯月の悩みは、自分自身にキラキラしたもの(=本作の比喩的には自分だけの花のようなもの)があるのかというものであるのと同時に、孤独に対する不安もあるのだろうと描いている感じ。自分自身にもしキラキラがなかったら→みんなに置いていかれる→また閉じたレッスン室に一人状態に戻る……という不安があるのだと思うのですね。

 そういう流れなので、救済は「卯月は一人ではないこと」を証明することが一つは鍵になっていた感じです。シンデレラプロジェクトメンバーやその他の徒党のアイドル達から送られる願い星。プロデューサーさんの言葉。信じて待つ凛と未央。そしてファンの人々、など。プロデューサーが指を口元にあてて笑ってみせるのは、かつて卯月の笑顔に救われた第7話(感想)を元にしてる感じで丁寧。アイドルたちが辞めていっていってしまった過去から孤独な歯車に徹しようとしていたプロデューサーさんを救ったのも、バラバラになりそうだったNEW GENERATIONSを繋ぎとめたのも、卯月の笑顔。卯月の笑顔こそが、このそのままだとみんながバラバラになっていく共同体崩壊の力学に満ちた世界で、何かを繋ぎとめておくもの。

 なのだけど、卯月自身がその自分の笑顔の力を信じきれない。

 で、幼い(過去の)自分を今の自分が救いに行くという演出や、みんなの願いの力が助けになるとか、非常に重なっているので、前作の千早救済回を、これは意図的にセルフオマージュしていたんじゃないでしょうか。共同体崩壊問題で傷ついた人がもう一度立ち上がれるとしたら? というのを描くというのも同じですし。


●参考:アニメアイドルマスター感想/最終回「みんなと、いっしょに!」


 もともと、第一話から前作との連続性も意識される演出があった作品ですしね。

 その上で、差異化をはかっていると思うのは、みんなの助力はありながらも、最後の一歩を踏み出すのは卯月自身というニュアンスが今作は強い点。上記の自分で自分を救いに行く演出もそうですし、不安の中でも一歩進むという決断をするのは、誰かに何かをしてもらったからというよりは、卯月自身の心のパワーで行ったという描き方にみえました。消えたように思えた掌の中の光を、過去の自分に星として渡してあげるのも、自分自身。前作で言うと、千早のポジションと春香のポジションを、両方卯月が兼ねてるみたいな感じでしょうか。今作は765プロというがっちりとした共同体を描いていた前作よりも、ゆるく繋がり合う市井の徒党のアイドル共同体を描いてるフシがあるとはずっと感想で書いてきましたが、良い意味で、ゆるく繋がり助力しあってる周囲はサポートまでで、最後に立ち上がるのは自分自身という感じ。

 そうしてラストのライブシーンで、メンバー(小日向さんもいるのがイイよね)やファンの方々、美城常務までもが交差する場で、卯月の笑顔が復活するのですが、その「やっぱり卯月の笑顔はすごいんだ」というのを、絵の芝居と文脈が加わった(シンプルなシンデレラストーリーを歌っているのではない)「S(mile)ING!」の歌詞のみで表現しているという部分に、アニメーションという媒体に対する作り手の矜持を感じました。つい、プロデューサーのモノローグとかで「彼女の笑顔とは……」とか言葉で説明したくなってしまいそう。そうじゃなくて、絵で、問答無用で、やっぱり島村卯月の本当の笑顔はすごいんだ。人々を幸せにするんだ、というのを表現する。そして、実際視聴者(僕ですが)は涙して多幸感という。またアイドルアニメの歴史に新たな一ページが……。

 あえて、図にしてみると(え)、島村卯月の笑顔のすごさは。


  ↓
 (島村卯月の笑顔)『NEW GENERATIONSの繋がり』
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 (島村卯月の笑顔)『Pの孤独の解消』
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 (島村卯月の笑顔)『シンデレラプロジェクトメンバーの繋がり』
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 (島村卯月の笑顔)『シンデレラプロジェクトメンバー以外の徒党のアイドルたちの繋がり』
  ↓
 (島村卯月の笑顔)『一人だった過去の自分の救済』
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 (島村卯月の笑顔)『北条加蓮や美城常務といった卯月のifの孤独者の救済』
  ↓
 (島村卯月の笑顔)『劇中のファンの方々の繋がり』
  ↓
 (島村卯月の笑顔)『劇外の共同体崩壊しがちなリアルでの彼女の笑顔を通しての視聴者・関係者の繋がり』


 こういうのに全部通底しているという感じでしょうか。前作が2011年で、そこから物語が繋がってる今作の作劇というのも考えると、共同体崩壊で失われた笑顔と、その回復・縫合の物語というのは、震災以降の諸々のリアルの事象に対しても色々と想起される物語かもと付け加えても良いかもしれません。

 島村卯月が本当の笑顔を取り戻すだけでこれだけのことが起こる、というのを表現し、またそこに向けてこれまでの物語も構築されていた、良い作品だったと思います。

→S(mile)ING!

THE IDOLM@STER CINDERELLA MASTER 010 島村卯月
島村卯月(CV:大橋彩香)
日本コロムビア
2012-08-08


→Blu-ray



→前回:『アイドルマスター シンデレラガールズ』第23話「Glass Slippers.」の感想へ
→次回:『アイドルマスター シンデレラガールズ』最終回の感想〜四人の孤独者と過去の自分を助けに行くということへ
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