ネタバレ注意です。
過去のサムライである剣之介の目線から、まずは現代文明の違和がいくつか描かれます。なんか、女子は破廉恥な格好になってるし(女性性の消耗品化)、箱は喋るし(伝達の複製化)、城には誰もいないし(文化や伝統の形骸化)、監禁されるし。お姫様という拠り所をなくした状態で、こんな世界で何を守るというのか。地味に、現代文明の意義を問われる展開です。
そんな流れから、過去の時代でも、現代でも「変わらないもの」がキーとして描かれていたと思われる今話。
(どんな時でも)腹が減る。
(昔と変わらない)山の風景。
和尚という(社会的ポジションとしての)存在。
子供は守るという価値観。
などが、そういった「変わらないもの」要素でしょうか。
そういう、過去と現代文明とで「変わらないもの」を媒介に、過去の人間が現在の人間を「信じ」、現在の人間も過去の人間である剣之介を「信じ」たというところにエッセンスがあった一話だと思いました。「信じる」ワードは、(「信じろ」も含めて)今話で何回も出てきましたからね。
何もない身で剣一本で小春を守ろうとする過去人の剣之介が美しいだけに、ピンチに現代人のトムが駆けつけてきてくれて共に戦った展開は胸熱でしたよ。現代文明人、まだ腐ってるわけではないのです。「子供は守る」とか、共有してる価値観があるのです。普段は口は悪くても、子供を助ける人がいるなら、協力はするのです。
「君が生きた時代から大きく世界は変わった。だがね、信じてほしいんだ。同じ人として」(薬師和尚)
過去でも現代でも。この国の人でも別の国の人でも。変わらずに信じられるものはあるはずというような話。自己無価値感を抱える由希奈(自分の未来に自信が持てない)と剣之介(姫という拠り所を失っている)の奇妙な同居生活が始まるというところで次回へ。
激しい変化の中、あまりにも無償の忠義のような剣之介的なものが失われ、無形の価値は剥奪され様々なものが消耗品化していく中で、自身の無価値感を感じてる人が多いような現代世界。Netflixと連携して(全世界独占配信)、このハイブリッド化されたジャパニーズサムライ感みたいなのは、まだまだ大事なものあるでしょと発信していってほしいところ。今話は二回視聴したのですが、要所要所で自然と涙を流しておりましたよー。
→エンディング曲
→前回:クロムクロ第2話「黒き躯は目覚めた」の感想へ
→次回:クロムクロ第4話「異国の味に己が境遇を知る」の感想へ
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【関連リンク:当ブログの2015年アニメーション作品ベスト10記事】
→2015年アニメーション作品ベスト10〜共同体から零れ落ちた人間にも、それまでとは違うカタチなりの祝福を(ネタバレ注意)