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 アニメ『ハイスクール・フリート(公式サイト)』第2話「追撃されてピンチ!」の感想です。

 ネタバレ注意です。
 ◇◇◇

 第一話から連呼されている「家族(一番基本単位の共同体)」というキーワード。今話では「(作中で「晴風」艦員に象徴される)疑似家族」要素のみならず、ましろさんの「本当の家族」についても描かれます。第2話のアバンとか重要な部分をもってくるのが常なので、この「本当の家族」が過去回想の形で語られるのは物語上重要なのかもしれない。回想の最後で帽子が飛んでいってしまっている辺り、現在ではましろさんの「家族」は何らかの形でバラバラになっている? だとしたらますます現代風刺的。

 今話、ああ。吉田玲子さんが描く「共同体」ものだなぁと感じた箇所は二か所あって。

 一つ目は、独りでシャワーを浴びながら艦員たちには不安は見せられないとする明乃……のシーン。これは、もう吉田玲子さんシリーズ構成の「共同体」ものだと『たまこまーけっと』ですよね。

 明るい「共同体」を維持するために、誰かの個人的な本心は表に出てこない構造がある……それが『たまこまーけっと』という作品だという話は、毎回丸投げですが、「ねざめ堂」さんの「『たまこまーけっと』を振り返る」カテゴリを参照してみてほしい所です。↓


『たまこまーけっと』を振り返る/ねざめ堂


 大きな破綻的出来事がやってきて、「日常」はある日突然に「非日常」に変わってしまう。一見「日常」を描いても、背後にそういう射程も見えるようにしておく……というのは、『けいおん!(!!)』的な「日常」の輝きを無謬には描けなくなった東日本大震災以降の吉田玲子さんシリーズ構成・脚本の作品・話数に顕著ですが、今作もそのラインですね。「晴風」艦内は表面的にはまだ「楽しい」感じで「日常」がある(そもそも作品の広報も『はいふり』という日常ほのぼのアニメに偽装するというプロモーションをとっていた)。でも、それは「非日常」と紙一重。現に、突然信じていた「学校共同体」側から撃たれ、ある日突然孤立無援に。

 そんな「日常」と「非日常」が危うい中で、場の「日常性」を保つために、自分の本心を周囲に出さない(出せない)子がいる。それが『たまこまーけっと』のたまこであり、本作の明乃であるわけですが。それゆえに、この二人に一種の聖女性みたいなものをみてしまうわけですが。てか、岬明乃というキャラクターはヤバい。これ、もの凄いキャラクターでもの凄い作品だよ。

 二つ目は、疑似家族共同体である「晴風」に、外部からミーちゃん(ヴィルヘルミーナ・ブラウンシュヴァイク・インゲノール・フリーデブルク)がやってくる……というくだり。

 これも、最近の吉田玲子さんの「共同体」もの作品に顕著な、「共同体は外に開かれてないとダメ」という要素で、「外部からの来訪者に窓を開いておこう」系の話ですね。『たまこまーけっと』でいうと、「商店街」という共同体だけに閉じてしまうと閉塞してしまうので、外部から異国人であるチョイちゃんがやってくる……のくだり辺りです。この辺りの流れは、まんま『たまこまーけっと』のチョイちゃん=本作のミーちゃんで重なりますね。

 そんな、カテゴリ的には敵であるはずのミーちゃんを助けに行くという度量を、何故明乃が持っているかといったら。


 「敵じゃないよ。海の仲間は家族だから」(岬明乃)


 明乃だけ、既に「共同体=家族」の範囲が、「晴風という艦内」だけじゃなく、「海を往くみんな」と広いんですね。ようは、『けいおん!(!!)』で「部室の中」だけが共同体じゃなくて、「外の世界」に最後は抜けていく、「外の世界」でも「輝いた共同体」は続けられる……という所に最終回で到達するという物語を描いたわけですが、明乃は、その『けいおん!(!!)』物語を通過した時点の視野に既にいるキャラクターだと。

 ちょっと図にすると、


『けいおん!(!!)』―部室―外の世界
『たまこまーけっと』―商店街―外の世界
『ハイスクール・フリート』―晴風―海


 という関係ですね。最近の吉田玲子さんがずっと描いてるのは、真ん中と右側の「風通りの良さ」と、右側全部が「輝いた共同体」のごとくなれたなら……という「理想」のような物語です。

 そういう流れで、岬明乃は『けいおん!(!!)』的理想を守れるのか? という物語の主人公とも捉えられそう。

 岬明乃という主人公はヤバい。無謬の「日常」が終わった世界で、児童期に信じた『けいおん!(!!)』的理想を守ろうとする子。「(擬似)家族(=「晴風」の艦員)」を守り、異国からの人(たぶん難民の比喩だよね)を守り、今話ラストではもえかから通信が入り、児童期の親友まで守らなくてはならなくなる。それは、独りで背負うにはあまりに守らなければならないものが多すぎて……という。

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はいふり (1) (MFコミックス アライブシリーズ)
阿部 かなり
KADOKAWA/メディアファクトリー
2016-04-23


→前回:『けいおん!(!!)』『ハナヤマタ』などの吉田玲子さんシリーズ構成のアフター学校共同体物語〜〜『ハイスクール・フリート』第1話の感想(ネタバレ注意)へ
→次回:『ハイスクール・フリート』第3話「パジャマでピンチ!」の感想へ
『ハイスクール・フリート』感想の目次へ

【関連リンク1:当ブログの吉田玲子さんシリーズ構成・脚本作品の感想】

『けいおん!』と『ハナヤマタ』で重ねられている演出とその意図について
『けいおん!!』最終回の感想はこちら
『SHIROBAKO』(シリーズ構成ではなく同テーマのキー話の脚本)の感想へ
『けいおん!(!!)』シリーズ構成の吉田玲子さん脚本による「バッドエンドけいおん!」を浄化する物語〜無彩限のファントム・ワールド第7話の感想(ネタバレ注意)

【関連リンク2:当ブログの2015年アニメーション作品ベスト10記事】

2015年アニメーション作品ベスト10〜共同体から零れ落ちた人間にも、それまでとは違うカタチなりの祝福を(ネタバレ注意)