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ネタバレ注意です。
『けいおん!(!!)』〜『たまこまーけっと』〜『ハナヤマタ』ラインの、吉田玲子さんシリーズ構成の「(擬似)共同体」ものテーマの作品と感じてる本作。
いずれの作品も、リアル世相(無縁社会など)も反映してか、「そのままだとバラバラになってしまう共同体を何らかの形で次のフェーズへ(向わせたい)」という要素が見て取れる作品です。
軽音部共同体、商店街共同体、よさこい部共同体などなどときて、本作はいわば「艦」共同体で、晴風という戦艦のメンバーが「共同体」にあたっています(明乃が「家族」という言葉をよく使う)。
で、この晴風共同体。水雷長は攻撃したいし、航海長は逃げたいし、機関科はスピード出したくないし、見事に「そのままだとバラバラになる」感じなのですね。それを、主人公で艦長の明乃が「バラバラにならないように調整する」ということをやってるのが今話では描かれてる感じです。表面的には楽しい日常が感じられる共同体なんだけど、それが辺り前のものではないと気付いていて維持に努めてる存在が独りいる……という意味では、明乃が『たまこまーけっと』のたまこポジションなんですね。
明乃が『たまこまーけっと』のたまこっぽい点はもう一つあって、そのように一人、「共同体」を維持するために、自分の本心は表に出さない(出せない)という構図がある点ですね。
前回第2話のみんなを不安にさせてはいけないと、独りでシャワーを浴びてるシーンに加えて、今話では、晴風という共同体の維持を優先して、本当はもえかを助けにいきたいという自分の本心を表に出さない(出せない)というのが描かれます。
あまりに一人で背負い過ぎていて、強いんだけどどこか危うい、という主人公像。「家族(晴風共同体)」が大事過ぎて、そこにケガ人が出るかもしれないというのは彼女にとって譲れない一線で、攻撃に転じる……というのも、家族を守るという彼女の優しさと同時に、どこか危うさも感じる場面だと思いました。
ただ、わりと救い要素かもしれないと仕込まれているのは、そんな明乃が前回助けたミーちゃんが優秀な人だったこと。前回ミーちゃんは(比喩的に)難民のポジションなんじゃないかと書いたのですが、難民の中にも優秀な人はいるのでした。リアルの共同体問題でも、けっこう尖ってる辺りをどんどんついてきておりますね。
明乃さんに自分を抑圧しないで思う存分にもえかさんのところに走っていかせてあげたい、だけど、そのために共同体が壊れるのもダメで……というジレンマが物語の動力なのですが、吉田玲子さんの『ハナヤマタ』以降の作品のラインを(テーマ的に)継ぐ形で、「外部とのリンク」が突破口になったりしたらいいんだけどなぁ。
●参考:『けいおん!』と『ハナヤマタ』で重ねられている演出とその意図について
信じていた共同体(学校・国)から切り離されて、最後の砦の「家族」共同体でがんばってるんだけど、リソースはもう持たない……的なシチェーションを描いていると思われるので、どういう解法に向かっていくのか楽しみです。
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→前回:『ハイスクール・フリート』第2話「追撃されてピンチ!」の感想(ネタバレ注意)へ
→次回:『ハイスクール・フリート』第4話「乙女のピンチ!」の感想へ
→『ハイスクール・フリート』感想の目次へ
【関連リンク1:当ブログの吉田玲子さんシリーズ構成・脚本作品の感想】
→『けいおん!』と『ハナヤマタ』で重ねられている演出とその意図について
→『けいおん!!』最終回の感想はこちら
→『SHIROBAKO』(シリーズ構成ではなく同テーマのキー話の脚本)の感想へ
→『けいおん!(!!)』シリーズ構成の吉田玲子さん脚本による「バッドエンドけいおん!」を浄化する物語〜無彩限のファントム・ワールド第7話の感想(ネタバレ注意)
【関連リンク2:当ブログの2015年アニメーション作品ベスト10記事】
→2015年アニメーション作品ベスト10〜共同体から零れ落ちた人間にも、それまでとは違うカタチなりの祝福を(ネタバレ注意)