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ネタバレ注意です。
『けいおん!(!!)』〜『たまこまーけっと』〜『ハナヤマタ』ラインの、吉田玲子さんシリーズ構成の「(擬似)共同体」ものテーマの作品と感じる本作。
『たまこまーけっと』の時点で、『けいおん!(!!)』みたいな「日常」はもう無条件では成立しなくて、意識的に守っていかないと……という視点が、(東日本大震災以降の)吉田玲子さんシリーズ構成の作品には見られるのですが。
今作はより、晴風のメンバー(共同体)は「日常」を守る人たちとして描かれていると感じております。『たまこまーけっと』の時点ではたまこ一人が意識的に「日常」を守ってたんだけど、『ハイスクール・フリート』では、第8話時点で明乃独りではなく「晴風」のみんなで守るというところまできている感じ。
「水着パート」とか「ネコ」とかが本作における「日常」要素なのですが、そういうほのぼのパートが「危機」によって中断されるという作劇が何度も繰り返されます。前回の「ネコ」も、災害時の中で「日常」を守るのか的なパートだと思うのですよ(さらに、「ネコ=日常」が「ラット=非日常」と戦う構図にも象徴的になっている)。ちょうど、最近も熊本地震でペットとの避難とかが話題になっておりました。大きい「非日常」的な破綻が生じた中で、「ネコ」的な「日常」をどうやって守るのか的なお話。
そんな中、このまま比叡が交通の要所に到達してしまうと世界的なパンデミックになってしまうと、再び「日常」が脅かされる状況に。
「私はみんな助けたい」
と、『Fate』か『魔法少女まどか☆マギカ』か『仮面ライダー鎧武』か『プリキュアシリーズの幸福の王子三部作』か、ゼロ年代〜10年代の「ヒーロー」を扱った作品で描かれるテーゼを口にする明乃に対して、前回、実際に自分が災害の当事者になって救われた体験を経たましろさんが、災害孤児のポジションである明乃さんの気持ちに今話ではどこか理解を示す。ついに黒木さんも折れて、明乃の単独行動の是非をめぐって二派に分断されていた「晴風」共同体が今話では共闘。「日常」を守るためには、一人のスーパーヒーローではなく全員のそれぞれの行動が必要。
地味に今話のクライマックスは、炊事のメンバーに「私たちはご飯をつくる」と言わせていたところ。壊れかけの「日常」という場でヒーローだったのは、震災の本震翌日からパンを焼いていたパン屋のおじさんなんだとは、僕もずっと思っていた。
艦長はもちろんいるんだけど、砲術に水雷に主計に電信に機関に炊事にetcに、「船」を動かすのに必要なそれぞれのパートを、リアルの現代社会を構成している様々なパートに重なるように描いているのが上手い。地味な仕事/パートはあるかもしれないけれど、「日常」を守るために不必要なパートはない。
これ、たぶん最終戦レベルの「日常」の危機で、「日常」の象徴の「ネコ」が何かに使われる展開なんだと思うのだけど、その、『けいおん!(!!)』で2011以降の壊れた「日常」に立ち向かう的な展開きたら泣くな。五十六を主砲に装填して発射するのかな(日朝脳)。エラく熱くなりそうで楽しみです。
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→前回:『ハイスクール・フリート』第7話「嵐でピンチ!」の感想(ネタバレ注意)へ
→次回:『ハイスクール・フリート』第9話「ミーナでピンチ!」の感想へ
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【関連リンク1:当ブログの吉田玲子さんシリーズ構成・脚本作品の感想】
→『けいおん!』と『ハナヤマタ』で重ねられている演出とその意図について
→『けいおん!!』最終回の感想はこちら
→『SHIROBAKO』(シリーズ構成ではなく同テーマのキー話の脚本)の感想へ
→『けいおん!(!!)』シリーズ構成の吉田玲子さん脚本による「バッドエンドけいおん!」を浄化する物語〜無彩限のファントム・ワールド第7話の感想(ネタバレ注意)
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