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 アニメ『響け!ユーフォニアム2(公式サイト)』第四回「めざめるオーボエ」の感想です。

 ネタバレ注意です。
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 長年の当ブログの解釈の通り、京都アニメーション作品にはいくつか作品をまたいで受け継がれ・進展しているテーマのようなものがあります。

 現在リリースされている作品群の中で、その最も最新のものは映画『聲の形』(公式サイト)で描かれており、この『響け!ユーフォニアム2』は、「その次」の物語である、ということ。↓


参考:映画『聲の形』の感想〜ポニーテールで気持ちを伝えられなかったハルヒ(=硝子)だとしても生きていくということ(ネタバレ注意)


 そして、その流れの中でもこの『響け!ユーフォニアム』は「ポニーテール」に象徴性を持たせた「ハルヒ」文脈の作品であるという点は、当ブログのこちらの記事を。↓


[5000ユニークアクセス超え人気記事]響け!ユーフォニアム最終回の感想〜ポニーテールと三人のハルヒ(ネタバレ注意)


 ここまでを前提としつつ。

 ◇◇◇

 最近の京都アニメーション作品では繰り返し描かれている、あなたは野球場の4万9999人側に過ぎなかった、「特別」ではなかった……と突きつけられた(『ハルヒ』における幼ハルヒの孤独・絶望)側の人間が、何とか自分の存在の意味を取り戻すまでの物語。

 近年の京都アニメーション作品でこのテーマでクライマックスを描いたものとなると、『甘城ブリリアントパーク』の終盤ということになるでしょうか。↓


参考:『甘城ブリリアントパーク』第12話の感想


 『甘城ブリリアントパーク』の終盤だと、4万9999人側も、「代替不可能な」かけがえのない存在だったんだ! という感じなのですが、その後の『無彩限のファントム・ワールド』や映画『聲の形』でのさらなるこのテーマの進展を受けて、今回の『響け!ユーフォニアム2』第四回でも、もう、代替可能でも、「代役」としてでもこの世に存在していることには意味があるさ! ともっていっていた印象です。

 現二年生の旧南中出身メンバー共同体の再構築を通してこのテーマを描いていたわけですが、希美さんを起点にすると分かりやすい。

 希美さんは、分かりやすく「ポニーテール」の記号を纏い、今話でも「私にとって希美は『特別』だから」と呼ばれていますし、疑似ハルヒのポジションです。ただし、中学時代に「競争原理」の前に敗れ去って、その「特別」性は現在では剥奪されています。

 鎧塚さんは、希美さんの存在によって自分自身の存在価値を自己承認していたので、これは二者間の関係で「特別」性を回復するという、『ハルヒ』におけるハルヒとキョンエンド。その、「白雪姫のキス」幻想(と、2016年まで文脈が進んだ段階では呼称しておいてみますが)で自分の価値を保とうとしていた人です。なのですが、ある日、希美さんからすると、自分は沢山いる友達の中の一人でしかなかった、と、ちょうど『ハルヒ』の幼ハルヒが「自分は4万9999人側の沢山のうちの一人でしかなかった」と突きつけられるのと重なる形で、自分の存在価値が再崩壊していた人です。

 そんな希美さんからの「二者間の関係」としての承認を失って崩壊していたところに、鎧塚さんにとって、いわば希美さんの「代役」としてセーフティネットとして機能していたのが、優子さんです。この優子さんが、鎧塚さんを引き上げるシーンを、影から光に引き上げる演出で焦点をあてていることから、最近の京都アニメーションは、ここの「代役でも意味がある」というテーマに重きを置いているのが伺えます。

 ところが、健気な「代役」をやっていた優子さんなのですが、鎧塚さんはやっぱり「ハルヒ」が、希美がイイと言って寄りを戻してしまうので、今度は優子さんが「椅子取りゲーム」の椅子から外れる(「競争原理」における敗北)ことになります。なのだけど、そこに夏紀先輩がサポートに入ることで、「代役」として生きる人の意味を救いとっているところで、今話は終劇しています。夏紀先輩こそが、彼女もまた「ポニーテール」の記号を纏い、自分自身は敗れ去った「椅子取りゲーム」の椅子には座れなかった側の存在(「競争原理」の敗者)ながら、常に敗れた人のセーフティネット的な役回りをするという、独特の「特別」性を持った人として描かれているというのは、「響け!ユーフォニアム最終回の感想〜ポニーテールと三人のハルヒ(ネタバレ注意)」の記事などでも書いていた通りです。番外編「かけだすモナカ(感想)」で、競争原理に基づく「椅子取りゲーム」で敗北した側の葉月を抱きしめる役割に回るのも夏紀先輩ですが、今回のラストで優子さんのサポート役に収まるのは、同じ意味合いということです。総じて、夏紀先輩はやっぱりイイな! となる作品です。

 そして、上のような流れを全て想定済みとばかりに俯瞰している「メタ特別」なあすか先輩という所で引き。

 毎回あすか先輩で引きなのですが、その繰り返しの中で、徐々にあすか先輩というキャラクターの真相が分かってくる(同じ「引き」で使われても少しずつ変化がある)という構成にはなっているのですが、あまりに繰り返されるので、「てんどん」的な面白さもあります(え)。みんな、次回もあすか先輩で引きだったら、ちょっと面白感を感じてくれても良いところだよ!

 真面目には、今回の第二期のメインヒロイン、というか『ハルヒ』における「ハルヒ」ポジションはあすか先輩かと思います。

 『響け!ユーフォニアム』という作品には、久美子=キョン、麗奈=ハルヒという風に想定して読める、(作品として)疑似『涼宮ハルヒの憂鬱』構造みたいなのがある、というような話は、「ねざめ堂」さんが2015年の時点で指摘しておりましたが。↓


『響け!ユーフォニアム』で描かれる「異質な他者」の可能性/ねざめ堂

『響け!ユーフォニアム』を振り返る 前編:他者の異質性の肯定/ねざめ堂

『響け!ユーフォニアム』を振り返る 後編:ポスト・キョンとしての黄前久美子/ねざめ堂


 ざっくりと乱暴に切り取ってみるなら、『ハルヒ』は、キョン視点から見て「わけ分からない」女の子だったハルヒが、最後にデレて「ポニーテール」になってくれる物語です。

 『響け!ユーフォニアム』第一期だと、久美子がキョンポジションで、その視点から視て当初「わけ分からない」女の子だったのは麗奈でした。麗奈がハルヒポジションで、最後に(要所で)「ポニーテール」になってデレてくれる、というまさに『ハルヒ』を本歌にした物語構造だったのでした。

 それが、今回の第二期、『響け!ユーフォニアム2』だと、引き続きキョンポジションの久美子から視て現在「わけ分からない」女の子ポジションになってるのは、あすか先輩です。なので、今回も、あすか先輩が「ポニーテール」にしてデレてくれるまでの物語なんじゃないかと。第一期ラストのあすか先輩の表情は『涼宮ハルヒの憂鬱』ならぬ『田中あすかの憂鬱』とでもいうようなもので、その意味でもモロにハルヒポジションです。それを晴らすのは、2016年の今は、「白雪姫のキス」ではない、何かだ、という物語。

 重なる視点としては、お姉さん関係の爆弾がふくらんできている久美子と、今は「競争原理」の中でも勝ってるから「特別」を維持していられるけど、いつか負ける時は来るフラグが立ってる麗奈との、破滅百合系カップルは、やはり二者間の関係のみで「特別」性を回復する「白雪姫のキス」の方法論は、ちょっと2016年では「それだけでは」通じないというのが意識されます。

 2016年版の解法のヒントは、既にオープニング映像に先取りされている通り、久美子自身も「ポニーテール」になって、共に演奏するという展開になる辺りにあるのかなぁと感じております。二者間で完結するのではなく、久美子もあすか先輩も、麗奈も希美さんも夏紀先輩も「ポニーテール」。そして、「特別」性の記号とか持ってなくても、「代役」でもイイという、大曼荼羅(え)的「次の」共同体。ああ、文脈が進んでいるなぁと感じるところです。

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→前回:『響け!ユーフォニアム2』第三回「なやめるノクターン」の感想へ
→次回:『響け!ユーフォニアム2』第五回「きせきのハーモニー」の感想へ
当ブログの『響け!ユーフォニアム(2)』感想の目次へ

【関連リンク0:2016年秋時点での京都アニメーション文脈(ハルヒ文脈)の最新地点、映画『聲の形』について】

映画『聲の形』の感想〜ポニーテールで気持ちを伝えられなかったハルヒ(=硝子)だとしても生きていくということ(ネタバレ注意)


【関連リンク1:京都アニメーションがこの十年どういうテーマで作品を繋いできたかに興味がある方向けの手引きとなる、当ブログの関連記事】

『ハルヒ』放映開始から十年、京都アニメーションがここまで進めた「日常」と「非日常」にまつわる物語〜『無彩限のファントム・ワールド』最終回の感想(ネタバレ注意)
[5000ユニークアクセス超え人気記事]響け!ユーフォニアム最終回の感想〜ポニーテールと三人のハルヒ(ネタバレ注意)
『甘城ブリリアントパーク』第12話の感想はこちら
[5000ユニークアクセス超え人気記事]『境界の彼方』最終回の感想(少しラストシーンの解釈含む)はこちら

『中二病でも恋がしたい!』(第一期)最終回の感想はこちら
『Free!』(第一期)最終回の感想はこちら
『氷果』最終回の感想はこちら
『けいおん!!』最終回の感想はこちら
『涼宮ハルヒの憂鬱』最終回の感想はこちら


【関連リンク2:(特に東日本大震災以降)「共同体を再構築してゆく物語」を日本アニメーションがどう描いてきたかに興味がある方向けの手引きとなる、当ブログの関連記事(主に吉田玲子さんが脚本・シリーズ構成を担当していたもの)

あの日欠けてしまった人の日常(=マヨネーズ)に私がなるということ〜『ハイスクール・フリート』第11話「大艦巨砲でピンチ!」の感想(ネタバレ注意)
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『SHIROBAKO』(シリーズ構成ではなく同テーマのキー話の脚本)の感想
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【関連リンク3:京都アニメーション作品のこれまでの"テーマ的な"連動・変奏の過程がよく分かる『ねざめ堂』さんの記事】

『無彩限のファントム・ワールド』と、10年代京アニの現在地点(前編)/ねざめ堂
『無彩限のファントム・ワールド』と、10年代京アニの現在地点(後編)