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 アニメ『響け!ユーフォニアム2(公式サイト)』第七回「えきびるコンサート」の感想です。

 ネタバレ注意です。
 ◇◇◇

 長年の当ブログの解釈の通り、京都アニメーション作品にはいくつか作品をまたいで受け継がれ・進展しているテーマのようなものがあります。

 現在リリースされている作品群の中で、その最も最新のものは映画『聲の形』(公式サイト)で描かれており、この『響け!ユーフォニアム2』は、「その次」の物語である、ということ。↓


参考:映画『聲の形』の感想〜ポニーテールで気持ちを伝えられなかったハルヒ(=硝子)だとしても生きていくということ(ネタバレ注意)


 そして、その流れの中でもこの『響け!ユーフォニアム』は「ポニーテール」に象徴性を持たせた「ハルヒ」文脈の作品であるという点は、当ブログのこちらの記事を。↓


[5000ユニークアクセス超え人気記事]響け!ユーフォニアム最終回の感想〜ポニーテールと三人のハルヒ(ネタバレ注意)


 ここまでを前提としつつ。

 ◇◇◇

 部長(晴香)の、


 「でもあすかは『特別』なんかじゃなかった。私達が勝手にあの子を『特別』にしていた」


 の箇所で、「ポニーテール」のあすか先輩がカットインするのは、第一期の感想の頃から読んで頂いていた方には鳥肌が立って頂けたのではないかと。

 第二期は、前半で希美さんの、後半であすか先輩の「特別(=ハルヒ性=ポニーテール)」からの「堕天」を扱ってるのですね。

 第二期前半が、鎧塚先輩に焦点があたった「競争原理」是か非か(「コンテスト」好きか嫌いか)のアンビバレントにまつわる話だったのに対して、後半はあすか先輩の「誰がソロとかどうでもいい」感じと「みんなで全国目指そう」な感じのアンビバレントにまつわる話になってきています。

 で、近代西欧思想的な、合理に基づいて白黒つけよう、という二項対立的な世界観に対して、ちょっとそれだけではどうなの? という視点があって、むしろアンビバレントはアンビバレントなまま包摂していくような方向性がある作品です。(方向性としてはブディズム(仏教)チックな『境界の彼方』方面)

 そういう背景の元、前回の学園祭、今回の駅ビルという「場」は、どちらかに白黒と分けるのではなく、色々な存在が相互貫入し合っている「境界領域」として描かれています。

 海でも陸でもなく、波打ち際をしなやかに駆けよう。

 「お盆」、最近だと「ハロウィン」みたいなもので、ぶっちゃけ生者と死者の交流領域みたいな表現まで射程に入っていると思います。前回の滝先生の奥さん(彼女も「特別」)の話で死者が意識される作りになってますし、この作品では「特別」の記号を持つ「ポニーテール」が『ハルヒ』の象徴表現ですから、あすか先輩(=『ハルヒ』)が必要なの、必要じゃないの……という話は、そのままメタに、『ハルヒ』という作品(過去:死者)と現在の作品(生者)との、相互貫入です。

 駅ビルという風通しの良い「場」にて、一度排斥されていた希美さんも、排斥されかけてるあすか先輩も「ポニーテール」で演奏に参加し、そもそも「ポニーテール」でもない葉月が本格的に参加し、部長(晴香)はソロを吹く……という「次の」形の「共同体」が描かれます。

 それは、たとえば「特別」なあすか先輩がいなくても、部長が、あるいは夏紀先輩が代役(バックアップ)に入ってくれてゆらめきながら調和を保ち続ける、という曼荼羅(え)的な共同体です。

 希美先輩、鎧塚先輩と今話で物語のみならずシーンとしても明確に片がついて(一緒に演奏してる)、梓も「駅ビル」の風景に組み込まれていたことで一区切りした感じ。

 残るはあすか先輩、麻美子、葵ですが、葵は第一話の花火のシーンで十分な気もします。

 そして、あすか先輩と麻美子に関しては、あすか先輩の母親(おそらく楽器をやっていた)と麻美子が、それぞれあすか先輩と久美子における(楽器・奏者としての)自分のルーツ……として重ねられています。

 そのルーツが、「競争原理」社会の中ですっかりダメになってしまっている。あすか先輩の母親は、まさしく父親さんは母親さんを捨ててより優れた異性に代替していった感じなのだと思いました。じゃあ、零れ落ちた者はどうするのか、という第一期からの主題が、というかここしばらくの京都アニメーション作品の全てが繋がってゆきます……。

 自分のルーツと向き合う話。「過去」の「呪い」を解く物語です。否定するのじゃなくて、あくまで「解く」のね。

 今年のアニメーション作品は全てこれがテーマだったんじゃないかという、時代的符合に驚いています。映画『聲の形』がこのテーマだというのは同じ京都アニメーション制作作品だからと分かりやすいですが、『コンクリート・レボルティオ』も『ラブライブ!サンシャイン!!』も『魔法つかいプリキュア!』も、つい先日公開の『この世界の片隅に』も(ある意味メタに)全部「過去」の「呪い」を解く物語ではないですか。連続性を再構築しつつも、過去の「呪い」を手放した自分に至るということ。

 何故に「過去」とのバランスを復元しておく必要があるかというと、「未来」に向かうためです。厳しい世相の中暗い未来も想起されますが、同時に明るい材料も散らばっているので、なんとか2017年以降は喜びに満ちた未来を選び取るのをキメてみたいものです。

 とりあえず、到来しそうな百合指数関数的上昇曲線(流行らせようとしてる)に備えて、夏紀×優子本を作ろう(え)。

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黒沢ともよ
ポニーキャニオン
2016-12-21


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→前回:『響け!ユーフォニアム2』第六回「あめふりコンダクター」の感想へ
→次回:『響け!ユーフォニアム2』第八回「かぜひきラプソディー」の感想へ
当ブログの『響け!ユーフォニアム(2)』感想の目次へ

【関連リンク0:2016年秋時点での京都アニメーション文脈(ハルヒ文脈)の最新地点、映画『聲の形』について】

映画『聲の形』の感想〜ポニーテールで気持ちを伝えられなかったハルヒ(=硝子)だとしても生きていくということ(ネタバレ注意)


【関連リンク1:京都アニメーションがこの十年どういうテーマで作品を繋いできたかに興味がある方向けの手引きとなる、当ブログの関連記事】

『ハルヒ』放映開始から十年、京都アニメーションがここまで進めた「日常」と「非日常」にまつわる物語〜『無彩限のファントム・ワールド』最終回の感想(ネタバレ注意)
[5000ユニークアクセス超え人気記事]響け!ユーフォニアム最終回の感想〜ポニーテールと三人のハルヒ(ネタバレ注意)
『甘城ブリリアントパーク』第12話の感想はこちら
[5000ユニークアクセス超え人気記事]『境界の彼方』最終回の感想(少しラストシーンの解釈含む)はこちら

『中二病でも恋がしたい!』(第一期)最終回の感想はこちら
『Free!』(第一期)最終回の感想はこちら
『氷果』最終回の感想はこちら
『けいおん!!』最終回の感想はこちら
『涼宮ハルヒの憂鬱』最終回の感想はこちら


【関連リンク2:(特に東日本大震災以降)「共同体を再構築してゆく物語」を日本アニメーションがどう描いてきたかに興味がある方向けの手引きとなる、当ブログの関連記事(主に吉田玲子さんが脚本・シリーズ構成を担当していたもの)

あの日欠けてしまった人の日常(=マヨネーズ)に私がなるということ〜『ハイスクール・フリート』第11話「大艦巨砲でピンチ!」の感想(ネタバレ注意)
『けいおん!(!!)』シリーズ構成の吉田玲子さん脚本による「バッドエンドけいおん!」を浄化する物語〜無彩限のファントム・ワールド第7話の感想(ネタバレ注意)
『SHIROBAKO』(シリーズ構成ではなく同テーマのキー話の脚本)の感想
『けいおん!』と『ハナヤマタ』で重ねられている演出とその意図について


【関連リンク3:京都アニメーション作品のこれまでの"テーマ的な"連動・変奏の過程がよく分かる『ねざめ堂』さんの記事】

『無彩限のファントム・ワールド』と、10年代京アニの現在地点(前編)/ねざめ堂
『無彩限のファントム・ワールド』と、10年代京アニの現在地点(後編)