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 アニメ『響け!ユーフォニアム2(公式サイト)』第八回「かぜひきラプソディー」の感想です。

 ネタバレ注意です。
 ◇◇◇

 長年の当ブログの解釈の通り、京都アニメーション作品にはいくつか作品をまたいで受け継がれ・進展しているテーマのようなものがあります。

 現在リリースされている作品群の中で、その最も最新のものは映画『聲の形』(公式サイト)で描かれており、この『響け!ユーフォニアム2』は、「その次」の物語である、ということ。↓


参考:映画『聲の形』の感想〜ポニーテールで気持ちを伝えられなかったハルヒ(=硝子)だとしても生きていくということ(ネタバレ注意)


 そして、その流れの中でもこの『響け!ユーフォニアム』は「ポニーテール」に象徴性を持たせた「ハルヒ」文脈の作品であるという点は、当ブログのこちらの記事を。↓


[5000ユニークアクセス超え人気記事]響け!ユーフォニアム最終回の感想〜ポニーテールと三人のハルヒ(ネタバレ注意)


 ここまでを前提としつつ。

 ◇◇◇

 久美子がユーフォニアムに辿り着いたきっかけ自体が、トロンボーンの「椅子」が埋まっていたので、そこから零れ落ちた、その先にたまたまユーフォニアムがあった、という流れだったということ。

 その児童期のエピソードと、風邪で一旦「椅子」から離脱する現在軸の久美子とが重ねて描かれておりました。

 第一期から檀上には上がれなかった側の夏紀先輩や葉月に焦点があたっている通り、総じて「椅子から零れ落ちた者」なりの生き方を描いている作品と言えるような本作なのですが。

 第二期にあたっては、自分と自分のルーツとの関係が現在ではこじれてしまっている……というのが何重層にもなって描かれています。

 ざっとでも。


 希美さん―鎧塚先輩
 麻美子―久美子
 あすか先輩―葵
 あすか先輩の母―あすか先輩


 という感じで、左側が「ルーツ」にあたる人、右側の人に影響を与えた人です。

 この、左側の「ルーツ」にあたる人が何らかの理由で現在はダメになってるのですが、これは、最近の京都アニメーション作品が総じて描いている課題、「競争原理」に主には根差しています。

 希美さんは、中学までは「特別」だった(「ポニーテール」=「ハルヒ性」の記号保持者)けれどコンクール(競争原理)に敗北してから何かがもつれ始めた。

 麻美子さんは、受験(競争原理)でトロンボーンを辞めた時から何かがもつれ始めた。

 あすか先輩は、まさに現在軸でタイムリーに受験(競争原理)関係(さらに背後に、あすか先輩のお母さん自体が「競争原理」の敗北者という遠景がある)でもつれ中。

 あすか先輩の母は、これは楽器をやっていたと推測されるのだけれど、おそらく旦那さんが他の女性の所へ行ってしまった(競争原理)ところから何かがもつれ始めたのだと推測。

 この「もつれ」を何とかする。それが原因で、途切れかけてしまった自分のルーツとの「縁」を結び直す……というのが『響け!ユーフォニアム2』という作品の物語です。

 主には、「代役」となる人がきっかけでこの「もつれ」た縁が現在なりの形で縫合され始める……という作劇をとっています。

 「希美さん―鎧塚先輩」間の「もつれ」に関しては、縫合してくれたのは、鎧塚先輩にとって、希美さんの「代役」になってくれていた優子さんでした(第四回「めざめるオーボエ」の感想を参照)。

 そして、今回白眉だった点としては、「麻美子―久美子」間の「もつれ」をほぐすきっかけになったのが、秀一だったという流れを描いたことです。この描き方は痺れました。秀一は、トロンボーンを辞めてしまった麻美子の「代役」として、高校からはトロンボーンを選んで久美子の側にいたんですよ。

 麻美子の「代役」の秀一が、久美子にとって「代わりがいないあなた」の麻美子と話しているシーンを、麗奈が立ち聞きしている……というこのシーンは凄い。秀一は、恋愛関係では、久美子にとって麻美子の「代役」ポジションでしかない。それを、滝先生にとっては、恋愛関係では亡くなった奥さんの「代役」にしかなれない麗奈が聴いている……という。秀一も麗奈も切ないですが、だが、「代役」なりの生き方があるということを、最近の京都アニメーション作品は描いてくれているところです。その意味で、秀一も麗奈も、第四回の優子さんであり、夏紀先輩です。

 なので、「あすか先輩」の問題も、あすか先輩、久美子の「代役」としてユーフォを吹いている夏紀先輩が何らかの役割を果たして「結び直し」に向かうのではないかと予想。第一期の頃の感想からずっと書いてますが、この作品は何と言っても夏紀先輩が(物語上)重要なポジションの作品なのです。

 「特別」=「ハルヒ性」を有していたはずの左側の「ルーツ」にあたる人が、実は「特別」じゃなかったと「競争原理」の中で「堕天」し、そこから生じた「もつれ」を、その「特別」な人の「代役」を媒介に縫合する……という作劇なわけですが、葵さんだけ、あすか先輩の「代役」になってくれて葵さんをサポートしてくれてる人が今の所いないんだよな……。最後まで、「代役」が現れてくれなかった人もいるよね的なポジションというのも作品に深みを与えるとも思いますが、何らかの形で、葵さんの欠けたシントムも癒される……という展開に辿り着いてほしい気も。

 いやー、しかし今話は秀一がカッコ良かった。(恋愛において)あなたの隣という椅子には座れないかもしれない。だけど、そこから零れ落ちた先なりの生き方で何か大事なもの(こと・人)を見つけることもあるかもしれない。久美子が、トロンボーンの椅子から零れ落ちて、ユーフォニアムに辿り着いたように。

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→前回:『響け!ユーフォニアム2』第七回「えきびるコンサート」の感想へ
→次回:『響け!ユーフォニアム2』第九回「ひびけ!ユーフォニアム」の感想へ
当ブログの『響け!ユーフォニアム(2)』感想の目次へ

【関連リンク0:2016年秋時点での京都アニメーション文脈(ハルヒ文脈)の最新地点、映画『聲の形』について】

映画『聲の形』の感想〜ポニーテールで気持ちを伝えられなかったハルヒ(=硝子)だとしても生きていくということ(ネタバレ注意)


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