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 『けものフレンズ(公式サイト)』第11話「せるりあん」の感想です。

 ネタバレ注意です。
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 作中の「前のループ」に相当するミライさんと前サーバルちゃんの時系列で、何らかの「破綻的な出来事」が起こったという遠景があると思われる本作。

 そのような災害が意識される「破綻的な出来事」というと、近年だとやはりリアルの方の東日本大震災が連想されるという視点から、『けものフレンズ』は「破綻的な出来事」からの「復旧」の過程を(連想として)綴っているんじゃないかという話を書いたのが、こちらの「その1」の記事です。↓


参考:ポスト3.11作品としての『けものフレンズ』その1(第1話〜第8話までの感想)


 で、今話は「今のループ」、かばんちゃんと今サーバルちゃんの時系列でも、「破綻的な出来事」が再び……というエピソードだったのだと思うのですね。

 せっかく、「あの時」から地道に「復旧」の過程を綴ってきたのに、また! というシチェーションだということですね。

 「前のループ」・ミライさんと前サーバルちゃんが経験した「破綻的な出来事」が東日本大震災が連想されるのだとしたら、今回の「今のループ」・かばんちゃんと今サーバルちゃんに再び訪れた「破綻的な出来事」は、「次の災害」が連想されるということです。リアルの方でも、首都直下型地震にしろ、南海トラフ大地震にしろ、必ず起こると言われていたりします。(そもそも、日本は地震大国なので)

 今話で再び起こってしまった「破綻的な出来事」、超大型セルリアンに関しても、ボスが発した警報は緊急地震速報や津波警報が連想されますし、木に登って(高い所に登って)対応する、セルリアン本体が水的な存在で水からの避難や、水(的な存在)にのまれたサーバルちゃんの救出などが描かれる……とだいぶ迂言的にはなってますが、津波の表現とも連想可能なように思われます。

 その上で、かばんちゃんがボスから避難しろと言われるのに、もうジャパリパークの当事者だからと、この「破綻的な出来事」の中での対応役に名乗り出るという展開になります。

 ここでの、災害時、非常時に公的職務を請け負う役回り=ガイド……というのは、やはりリアルの方で震災時に公務に殉じた人たちが連想されるようになっていると感じられます。

 尊い行動ではあるのですが、リアルの方の震災時でも、そのような公的な役割に殉じた人達が、沢山の人々を助けた一方で、本人は亡くなってしまったりというケースがありました。今話のサーバルちゃんは助けたけれど、自分は最後に超大型セルリアン(水的な存在)に飲まれてしまうかばんちゃん……という流れは、深読みかもしれませんが、そういうシチェーションをも連想してしまうのです。

 なので、このままでは「前のループ」でミライさんが(おそらく)殉じた出来事の繰り返しになってしまうのですね。生き残ったサーバルちゃんはいわゆる「サバイバーズギルト」的なものを背負うポジションになって、自分だけが生き残ってしまったという自責の念を抱えて生きていく流れになってしまいます。

 そこで、「今のループ」で、そういうガイド的な人(=かばんちゃん)も生き残れる要素が作中に含まれているとしたら、それは「前のループ」・ミライさんからのメッセージなのだと思うのですね。

 つまり、ボスに記録されていたミライさんからのメッセージというのは、リアルの方に当てはめるなら、いわゆる(前の)「震災の教訓」に相当する要素なのだろうと感じるのです。今話でも、かばんちゃんはギリギリまで前の世代(ミライさん)が残してくれたメッセージ(=教訓)を読み解いて、対応しようと誠実でした。

 そう思うと、要所要所に「前の世代のメッセージを受け継ぐ」という要素が盛り込まれていた作品だったと気づかされます。ぺパプの話の時の何代か前のぺパプのことをちゃんと受け取ろうとする現ぺパプたちとか。かばんちゃんという「前を行く者」の痕跡を丁寧に追走するアライさん……とか。

 前記事で、ポスト3.11文脈の作品として、去年(2016年)の『シン・ゴジラ』や『君の名は。』をあげましたが、今話の展開はかなり『シン・ゴジラ』的です。災害が連想される強大な存在(=シン・ゴジラ=超大型セルリアン)に、作戦を立てて人間が立ち向かう……という構図ですね。「ジャパリパーク」も、名称が「ジャパン」チックですし、周囲が海に囲まれていますし、ストレートには日本の比喩なのかな? と思って視聴しております。

 『シン・ゴジラ』の方は、そのような災害を乗り越える要素として、(日本の)「重機的なもの」とか「地道さ」を出していたと僕は解釈しているのですが、本作『けものフレンズ』ではどういう要素で乗り越える、完全に乗り越えられないまでも対応する様を描くのか、最終回がとても楽しみなのでした。

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→前回:『けものフレンズ』第10話「ろっじ」の感想へ
→次回:けものフレンズ最終回の考察〜ポスト3.11作品としての『けものフレンズ』その3へ
→初回:ポスト3.11作品としての『けものフレンズ』(第1話〜第8話までの感想)へ
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