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記事本編はネタバレ注意です。
「ご当地ヒーロー」……つまり現実世界の僕の地元宮城県だと未知ノ国守ダッチャーさん(Twitter)、コミカライズを担当されてるあずせさんの山口県だと海峡戦士タイガーフークさん(Twitter)とかですね。ならぬ「ご当地ヒロイン(アクションヒロイン)」が日本中に広まっているという世界観の本作。
お金・人材など、何かとリソースが(リアルと同じく)地方には回ってこないというのが描かれます。
「陽菜野市」、地元固有の「さくら祭り」では盛り上がらないので、全国的な人気の「カミダイオー」の恩恵にあずかって人を呼ぼうとするのですが、カミダイオーはやってこないでショーは中止になってしまうのですね。
印象的に、作中世界にはご当地ヒロインの「ランキング」があることも大事な情報として出てきます。
一方では、頂点の頂点、「ランキング」で言ったら一位をぶっち切ってるくらいの「全国的スター」・「アクションヒロイン界のカリスマ的存在」の「カミダイオー(神栖真心)」がいる。
一方では、「ランキング」で言ったらまだ掲載すらされていない、作中の言葉で言ったら「乗り遅れちゃって」いる、これから始まる「地方」の「チアフルーツ」がある。
この二つの「ご当地ヒロイン像」が物語冒頭では対置されてる感じなのですが。
「カミダイオー」の方は姿がストレートには日本史上の大和の国の「大王(おおきみ)」が連想される感じになっていて、比喩、方向性としては頂点にして国、「中央集権」って感じがします。
一方で、これから始まる「陽菜野市」の「チアフルーツ」はその流れでいくと「地方豪族」くらいの位置づけでしょうか。
国と地方。
中央集権か地方重視(再建)か。
現実世界の近年でもタイムリーに意味を持つ話題なので、時代性がある話題をうまく噛み砕きながら(エンターテイメントアニメーション作品用の)設定に反映させてるな〜と思いました。
だから、カミダイオーがやってこない……というくだりは中央からの分配が地方に回ってこない的な意味合いも連想されるのですね。そこに頼ってばかりもいられないという。
だから、カミダイオー頼みではなく、「陽菜野市」&「チアフルーツ」独自の「何か」を出していかなきゃならない感じなのですが、その「何か」はコミカライズ版の第1話&第2話同様、このアニメ版第1話でも描かれていて、ざっくりとは「共同体」、特に「家族(的なもの)」だよなと思いました。
頂点の「カミダイオー」は、一地方豪族から(本人の意図はともかく位置づけとしては)「競争」を勝ち抜いて「全国的スター」(=「大王」的ポジション)にまで登りつめたポジションです。
いわば、「競争」「ランキング」を勝ち抜いて「頂点」に至るという「競争原理」的世界観が「カミダイオー」の背後には見え隠れします。あるいは、「地方都市」の「ご当地ヒロイン」からステップアップして最終的に頂点の「全国的スター」に至るという、いわば「単線的」な進化像ですね。
だけどそれを追走するだけでは「チアフルーツ」は勝てるはずもないし、自分自身にもなれないので、第一話で描かれているのは、そんな「カミダイオー」的「単線的」な進化像とは異なる、「チアフルーツ」側の最初の動機です。
それがやっぱり、
・妹の柚香のために立ち上がる美甘さん
・新体操(個人競技)ではなく現在は医者である両親の影響で人助け(アクションヒロイン)に意識が向いている杏さん
・文化ホールを再建することで祖父の意志を継ごうとする御前さん
・車椅子生活なりに手助けしてくれる元気さん
などなどの描写に込められてるもので、やっぱり「何か」はざっくりとは「共同体」、特に「家族(的なもの)」って感じだと思うのですね。
「チアフルーツ」側の原初の「想い」は、「ランキング」を勝ち抜きたいではなく、「全国的スター」になりたいでもなく、あるいは自己実現したいとか「輝きたい!」でもなく、「妹の柚香に喜んで貰いたい」「困ってる美甘を手助けしたい」「祖父の代からの繋がりを尊重したい」などなど、から始まっているというのが描かれているのですね。これは、上記の「単線的」な進化像とは明らかに異なる初期衝動です。
車椅子の元気さんなんかは、元はアイドルを目指していたという設定ですから、「ランキング」を勝ちぬく! 的な方向性「のみ」では敗北者なわけです。だけど、そういう彼女なりに困ってる杏や美甘を手助けしてくれる。コミカライズ版の第一話&第二話にも入っていたシーンですが、そういうことは大事なことだとして描いている。このシーンは、杏さんも美甘さんも車椅子生活者の元気さんを普通に受容している様子も含めて、良かったですね。
第一話のクライマックス、ショーの途中で困難に遭遇した美甘に、妹の柚香が送った応援は、
「がんばれ、お姉ちゃん」
です。
ここまで、しょぼい段ボールのロッチ王に、バイクじゃなくて自転車だったりと、今回の美甘と杏のショーは「カミダイオーのパロディに過ぎない」と強調されていたのですが、ここで柚香が「カミダイオー」じゃなくて「お姉ちゃん」って声援を送るのですね。
この、ニセモノだけどホンモノだ! 的な熱さが伝わりますかね。うんうん。『仮面ライダーディケイド(感想)』ってことですね(え)。
この作品自体が東映ヒーロー作品の豊富なパロディから成立している、というかシリーズ構成が特撮作品でもお馴染みの荒川稔久さんで虚実が混淆しているだけに、熱い主題が含まれていると感じる部分なのでした。
上記のような流れで、「カミダイオー」的な「競争原理(ランキング)を勝ち抜く」と対置されている「チアフルーツ」側の初期衝動は、明らかに「家族」とか「共同体」方面です。
やはり、この作品もここに繋がってきたと感じました。
最近の当ブログだと、『響け!ユーフォニアム(2)』の感想でずっと書いていた、「競争原理」と「共同体」を対置させて、その縫合・包摂を希求する物語、というやつです。
参考:響け!ユーフォニアム感想
あまりに「共同体」が壊れ過ぎて個人がアトム化し、「無縁社会」なんてキーワードもHOTな現実社会を反映してか、近年、多くの創作作品がこの主題を扱っていると思います。
そもそも、「競争原理志向」(ランキングとかを勝ち抜いていく意志)と「共同体志向」(家族とかを大事にする意志)が、どうして現代社会だとバッティングしやすいのか? という点に関しては、基本的な理解の補助になるテキストを、アニメ『3月のライオン』を例に「ねざめ堂」さんが書いてくださっていますので、こちらの記事なんかも合わせて読んで頂けたら喜びます。↓
参考:『3月のライオン』(アニメ版)感想:「競争」と「共同体」のバランスゲーム/ねざめ堂
あまりに個人が勝ち抜けばイイ。勝ち抜いた個人がエライという流れが加速する中で、美甘さんの妹(柚香)への「想い」、御前さんの祖父への「想い」、あるいは(まだあんまり明らかじゃないけど)元気さんの勇気さんへの「想い」を「守る」……というヒーロー像。
美甘さんの妹(柚香さん)への「想い」を「守る」ため、杏さんが櫓(やぐら)から跳躍するシーンはひたすらカッコいいです。
やはり本作は「ヒーローもの」モチーフの作品で、各メインキャラクターに「色」がわり当てられたりするので、日本では「東映」さんの「戦隊ヒーローシリーズ」「仮面ライダーシリーズ」「プリキュアシリーズ」などなどが描いてきた「ヒーロー像」(その源流には地元宮城県は石巻出身の石ノ森章太郎の「ヒーロー像」が関係していたりもします)とも関係してくる作品と捉えられると思いますが、杏は割り当てられている色も「赤」で、戦隊ヒーローでいったら「レッド」ですから、色濃く本作の「ヒーロー」観をになっているものと思われます。
「(他人の)想い=心=夢」を「守る」というのは、上記のシリーズで近年「東映」さんが打ち出している「ヒーロー像」とも重なりますからね。やはり杏は「ヒーロー」だと思ったのでした。
参考:プリキュアシリーズの感想/別ブログ
「櫓」は、本当の伝統的な建造物ではなく、手抜き建築のものだったということで、これも中央からのリソースの分配はあてにならない的な象徴だったりするのか……と読むのは、深読みが過ぎるでしょうか。
ラストは、そんな櫓は倒壊して、自分たちの物語、地方の、陽菜野市の、チアフルーツの物語が始まる! という感じで第一話は終劇。
最初は「カミダイオー」の模造から始まってはいるものの、「カミダイオー」的「単線的」な進化像だけじゃないでしょ! として始まってる第一話ラストだと感じます。
「単線的」な進化像だけでは取り零されてしまうような、「家族」への想い、「共同体」、「地方」、などなど、そういうものを汲み取って「単線」を「複線」にしていくために。
参考:京都アニメーション作品における「境界領域者」とゲンロン0における「観光客」と漫画をめくる冒険における「身体離脱ショット」と
存外に面白かったです。
主題上、かといって伝統的な「家族」「共同体」「地方」などなどへ回帰するのを掲げるだけでも終わらず、「競争原理」的なもの「ランキング」的なもの「全国的スター」的なものとそれらとの、バランスの回復、縫合、包摂まで射程に入っていきそうな物語の出だしで、ことの他に熱いと思ったアニメーション版の第一話だったのでした。
◇◇◇
あずせさんがコミカライズ担当したお祝いに、柚山さんが路子さんのファンアートを描いておられます。相変わらずうまい……。↓
僕も第一話では少ししか出てきてないけど路子さんに惹かれている。あずせさん ( @_azuse )ヤンチャンピオン烈での、チアフルーツ新連載、そしてお誕生日おめでとうございます。
— 柚山左楽 (@YuzuyamaSaraku) 2017年6月25日
ちなみにこれはチアフルーツの路子ちゃん。 pic.twitter.com/p9sQLrM1Yo
本作の豊富な特撮作品のパロディについては、TJさんのTwitterとかチェックしてると良いですよ。↓
本家の戦隊でいつもアイドル話を書いていた荒川さんが、ローカルアイドルとローカルヒーローが融合したアニメを書いているということか。 #チアフルーツ
— TJ-type1 (@tjtype1) 2017年7月6日
チアフルーツで検索してたら、「荒川稔久版ラブライブ」というパワーワードに遭遇してしまった。
— TJ-type1 (@tjtype1) 2017年7月7日
井上敏樹版ラブライブ、小林靖子版ラブライブも見たいんですが。
— TJ-type1 (@tjtype1) 2017年7月7日
そしてそして、先日発売の雑誌「ヤングチャンピオン烈」2017年No.7より、あずせさん(Twitter)によるコミカライズの連載が始まっております。特オタ御用達アニメ #チアフルーツ 1話のクライマックス、ニコ動のコメントで「ウルトラマンのシーボーズ戦の演出だぞ!」と教えてもらったので確認した。 pic.twitter.com/Ia1jz20hUy
— TJ-type1 (@tjtype1) 2017年7月8日
初回は巻頭カラーで一挙二話掲載。
僕も買って読んだ感想はこちら(一部今回の記事と文章が重複しております)。↓【宣伝】本日発売のヤングチャンピオン烈No.7(告知でNo.6と間違えてました!)にて、夏アニメ「チアフルーツ」のコミカライズを描かせて貰えることになりました〜!巻頭カラー、1、2話同時掲載です!どうぞよろしくお願いいたします! pic.twitter.com/zmAb4mZM2c
— あずせ@チアフル連載中 (@_azuse) 2017年6月20日
●チアフルーツ/感想/第1話&第2話(コミカライズ版/「ヤングチャンピオン烈」2017年No.7掲載分)
あずせさん(もともと、地方とか大事にする感じで活動してた感がある方なのですよ)の情念ほとばしるコミカライズ版もめっちゃ面白いので、是非ぜひ。現在は、掲載雑誌の電子書籍版も配信開始されております。↓
→「ヤングチャンピオン烈」2017年No.7・Kindle電子書籍版
第三話掲載の8号も7月18日(火)に(紙の雑誌版)発売予定。
あずせさんの漫画はえろく可愛く面白いので、みんな読んでみて!
●サークル:知恵の原石/とらのあな通販(R-18注意)
参考:あずせさんの『ヴァルキリードライヴセイレーン-ブレイクアウト-』の単行本が発売
参考:ヴァルキリードライヴ セイレーンコミカライズ第一話を読もう、第0話相当劇場版『Wake Up, Girls! 七人のアイドル』が期間限定フリー公開開始なのでこちらも観よう、創作活動進捗
→『チアフルーツ』はAmazonビデオでも観られるんじゃ
→Blu-ray
→次回:『アクションヒロイン チアフルーツ』第2話「普通の【ろこ】がヒロインやってもいいんだけど」の感想へ
→当ブログの『アクションヒロイン チアフルーツ』感想の目次へ
【関連リンク0:昨年2016年の「アニメーション」作品ベスト10記事】
→2016年「アニメ作品」ベスト10〜過去の悲しい出来事を受け取り直し始める震災から五年後の想像力(ネタバレ注意)
【関連リンク1:「共同体」を一つの主題に扱っている京都アニメーション作品がこの十年どういうテーマを繋いできたかに興味がある方向けの手引きとなる、当ブログの関連記事】
→『小林さんちのメイドラゴン』感想へ
→『響け!ユーフォニアム2』の感想へ
→映画『聲の形』の感想〜ポニーテールで気持ちを伝えられなかったハルヒ(=硝子)だとしても生きていくということ(ネタバレ注意)
→『ハルヒ』放映開始から十年、京都アニメーションがここまで進めた「日常」と「非日常」にまつわる物語〜『無彩限のファントム・ワールド』最終回の感想(ネタバレ注意)
→[5000ユニークアクセス超え人気記事]響け!ユーフォニアム最終回の感想〜ポニーテールと三人のハルヒ(ネタバレ注意)
→『甘城ブリリアントパーク』第12話の感想はこちら
→[5000ユニークアクセス超え人気記事]『境界の彼方』最終回の感想(少しラストシーンの解釈含む)はこちら
→『中二病でも恋がしたい!』(第一期)最終回の感想はこちら
→『Free!』(第一期)最終回の感想はこちら
→『氷果』最終回の感想はこちら
→『けいおん!!』最終回の感想はこちら
→『涼宮ハルヒの憂鬱』最終回の感想はこちら
【関連リンク2:(特に東日本大震災以降)「共同体を再構築してゆく物語」を日本アニメーションがどう描いてきたかに興味がある方向けの手引きとなる、当ブログの関連記事(主に吉田玲子さんが脚本・シリーズ構成を担当していたもの)
→あの日欠けてしまった人の日常(=マヨネーズ)に私がなるということ〜『ハイスクール・フリート』第11話「大艦巨砲でピンチ!」の感想(ネタバレ注意)
→『けいおん!(!!)』シリーズ構成の吉田玲子さん脚本による「バッドエンドけいおん!」を浄化する物語〜無彩限のファントム・ワールド第7話の感想(ネタバレ注意)
→『SHIROBAKO』(シリーズ構成ではなく同テーマのキー話の脚本)の感想
→『けいおん!』と『ハナヤマタ』で重ねられている演出とその意図について
【関連リンク3:特撮作品のパロディが豊富な『アクションヒロイン チアフルーツ』。表面的な模倣にとどまらず、テーマ的なものも織り込んで構築していると感じます。当ブログの特撮感想記事】
→仮面ライダー鎧武感想
→仮面ライダーディケイド感想
→侍戦隊シンケンジャー感想