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 相羽です。

 『おかえりモネ(公式サイト)』第1週「天気予報って未来がわかる?」(第2回)(5月18日放映分)の感想です。

 ネタバレ注意です。
 ◇◇◇

 サヤカさんさんより、「ヒバ(あすなろ)」と「ヒノキ」の対照的な捉え方が百音に伝えられます。

 サヤカさんが語る「ヒバ(あすなろ)」評、いわく、


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 でも、登米の山にヒノキは自生しない。ヒノキの北限は福島だ。この山で生まれた限り、どうがんばってもヒノキにはなれないってこと。

 でもね。ヒバは雨、風、雪に耐えながら、ながーい時間かけてゆっくり成長すっから、体がびちっとしてて、緻密で、くるいが少なくて、虫にも湿気にも強い。私、ヒノキにはなれなかったってモジモジしてる木だけどね、この子は、ものすごくイイ木なのよ。

(『おかえりモネ』第1週「天気予報って未来がわかる?」第2回より)


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 これはもう、僕らが信じる理想の「東北」人って感じです。

 一方、福島より南、つまり関東圏、「東京」よりの概念扱いになっている「ヒノキ」の方は、


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 有名でしょ。みんなに重宝される。

(『おかえりモネ』第1週「天気予報って未来がわかる?」第2回より)


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 『おかえりモネ』も「東北」と「東京」の対照構造が軸にある作品なのですね。

 僕自身が若い頃4年ほど関東圏で暮らして、東京の力学(基本的には資本主義と拡大主義)が色濃い場所は僕には合わない……と宮城に帰ってきて長年暮らしている身なので、この、


「東京」―「東北」


 という事象の対照構造は肌感覚として分かります。

 妹の未知が、


「将来、私は研究者になって科学的な見地から日本の水産加工業をさらに発展させる方法を見つけたいと思っています。」


 という夢を語ります。

 これは、百音には現時点では「ヒノキ(重宝される)」のように映りながらも、本質的には地元志向な「ヒバ(東北)」的な要素かと思いますが。

 2014年は、東日本大震災で宮城、東北の水産業が大ダメージを受けている状況です。

 つまり、彼女の「日本の水産加工業をさらに発展させる」という夢は、彼女自身のものというよりも、外側からきているものとも捉えられそうです(もちろん、それは悪いことではないのですが……)。発展というより復興なんですよね。

 ある者は復興を考えて地元に貢献すると覚悟を決め、ある者はアイドルになり、ある者は気象予報士を目指すかもしれない。そんな頃。

 この「ヒバ(東北)」的な要素と、「ヒノキ(東京)」的な要素が、「外の世界」を通して関係し合っているといった話が、幼少時の百音と未知が聞いたおじいちゃん・龍己の語りとして語られます。


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 山の葉っぱさんたちが海の栄養になるのさ、山は海とつながってるんだ。なーんも関係ねーように見えるもんが、何かの役に立つってことは世の中にいっぺーあるんだよ。

(『おかえりモネ』第1週「天気予報って未来がわかる?」第2回より)


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 これは、一般論的には「いっけん関係ないことも万物万象は関わりあっている」というよく世俗の中でも聞く話(今話的にはヒバは切られても能の舞台の素材として生かされるとか)ですが。

 おじいちゃんが昔からの東北人であることを考慮すると、「いっけん対立し合っていることも『外の世界』を経由して『縁』で関係し合っている」というような、ちょっと霊的な要素の含意もある語りだと思います。

 ここでいう「外の世界」っていうのは、もう神さまの領域の世界というか潜在世界というか、そういった不思議な世界ですね。

 東北は遡ると西のヤマト朝廷の影響を受けずに、東北独自の縄文文化の精神性を残しているという見方もあるくらいですから、こういう合理に還元しきれない不思議な感覚は、わりと今も持っている東北の人は多かったりします。

 そんな、不思議世界から「東京」と「東北」の対照から、曼荼羅(マンダラ)のように展開している柔軟な(象徴を含む)作劇の中、ラストでは「東京」の象徴である気象キャスターの朝岡覚(あさおか・さとる)が登米にやってきて百音と邂逅して引き。

 これは、事前広報で「東京編(?)」があることもわかっているので、百音はいったん「東京」の力学の方にいくのかな。

 「東京」の力学と「東北」の全体性を、(それこそおじいちゃんが語るような不思議な世界も込みで)縫合していくような作劇をとろうとしているのだったら、とても面白い試みのドラマだな〜と思うのでした。

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