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 相羽です。

 『おかえりモネ(公式サイト)』第1週「天気予報って未来がわかる?」(第5回)(5月21日放映分)の感想です。

 ネタバレ注意です。
 ◇◇◇

 北上川の移流霧(いりゅうむ)に包まれる百音、朝岡さんというシーンが印象的ですが。

 第1回の感想から、神話的な要素がある作品だという趣旨のことを書いてきましたが。

 百音が「雲の中にいるみたい」と言っている通り、明らかにこれも神話的な表現です。

 もともと、登米能の描写などを通して、古(いにしえ)へのアクセスを意識させる表現を積み重ねていたこともあり。

 登米、気仙沼に地域固有の神話や伝承があるのかまではまだ調べていませんが、大きく日本神話的には、


 天
 |
 雲
 |
 地



 という構図で、このシーンの百音と朝岡さんは「雲」という「天」と「地」の「境界領域」にいるという表現です。

 「境界領域」では世俗の結界は薄れて、合理のヴェールは剥がれ、時間・場所などの物理制約は解放されて不思議世界になりますから、


 2014年の北上川の移流霧=2011年以前の気仙沼の氣嵐(けあらし)


 という、合理世界ではあり得ない不思議現象が立ち現れてきます。

 そのような世俗から離れたいわば「聖」の世界で百音から吐露されるのは、東日本大震災の時に自分は「何もできなかった」という本音、自罰です。

 しかし同時に、第1週「天気予報って未来がわかる?」は、百音が己の天命、「気象予報士」を見つけるきっかけの話にもなっています。

 「天気予報」がキーワードで物語が構成されているのですが、この「天気」の「天」は、先ほど書いた神話における「天」と象徴的に関係がある……というアクロバティックな物語構成をとっているように思います。

 日本神話的には、「天」は「高天原(たかまのはら)」で、ざっくりとは「神様の世界」なので。

 よく、「天命」という言い方をしたりしますが。

 東日本大震災の時に「何もできなかった」百音が自罰の防衛機制として、光太朗の「人の命を救いたい」、未知の「水産加工業を発展させたい」に相当するような自分の「好き」を探しているという状態だったのですが。

 今回の「雲」の地点の「境界領域」で、「天」から「天命(気象予報士)」のきっかけをもらった……という、もう本当神話のような物語構成になっています。

 「天命」にいたるには、東日本大震災を経験した過去にも意味があったのかもしれないというような話でもあるので、第2回でおじいちゃん・龍己の語りとして語られた、


---

 山の葉っぱさんたちが海の栄養になるのさ、山は海とつながってるんだ。なーんも関係ねーように見えるもんが、何かの役に立つってことは世の中にいっぺーあるんだよ。

(『おかえりモネ』第1週「天気予報って未来がわかる?」第2回より)

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 の世界観でもあります。

 おじいちゃんがこういう感じで、おばあちゃんは牡蠣に転生してるし、百音の祖父母の世界は、やはり何かしらの神様の世界とのパス的な意味合いで描かれているように思います。

 で、神話的には、このあと「地」のパートがはじまったりするのですが。

 それが、東京で気象予報士を目指すパートだったりするのでしょうか。

 新城カズマ氏の物語類型的には百音という主人公は「さまよえる跛行者(はこうしゃ)」で、震災の日に負ってしまった自罰という己のバランスを欠いた部分を、跛行して回復していく……というキャラクターです。

 跛行という旅路が予見される主人公だけに、「おかえり」と作品タイトルに入っているのは、よく行き届いている作品だなと思う次第なのでした。

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