『おかえりモネ(公式サイト)』第2週「いのちを守る仕事です」(第10回)(5月28日放映分)の感想です。
ネタバレ注意です。
前回の感想で、百音が「切られた木」の価値を理解しているシーンは、象徴的に「切られた木」である父・耕治(音楽の道を諦めているから)のことを理解しているという意味合いがある。
山、空、海の循環のように、一見関係ないように見えても、父・耕治がかつて音楽を諦めたという一見マイナスな事象が、現在で百音が人助けをするという事象に繋がっているという描き方をしている。
ということを書きましたが。
今回では、より分かりやすく、ケイスケくんを助けるために、父・耕治が作った笛が役に立つ……という展開が描かれます。
ケイスケくんを「ねむり」、つまり「死」の世界から呼び戻すという表現ですから、父・耕治の存在はかなり重要なのですよね。
百音自体が、震災の日の無力な自分を自罰しているところからはじまり、どこか「死」と近しいところにいるような主人公造形ですから。父・耕治の存在に「死」に引かれる者を「生」の世界に呼び戻すタイプの意味合いがあるのだとしたら、いくつかの気象災害が描かれるのが予想される今後の物語的にも重要そうです。
そういった一連の流れを踏まえて、朝岡さんの語りから、これまでキーワードとして出てきていた「山」、「空」、「海」の3つは、「水」で繋がっているという視点が提示されます。
確かに、龍己おじいちゃんの例のキーとなる語りでも、山の栄養を海へと運ぶのは「水」ですからね。
オープニングも虹をイメージした「なないろ」表現ながら、百音自身のイメージカラーは「水」が意識される「青」です。
これは、百音が世界の循環の中での「水」的な役割を果たすキャラクターだ、という暗示だったりするのでしょうか。
ラスト、百音の天命、「気象予報士」についても、百音が一番惹かれたフレーズは「命を守る仕事です」。
震災の時に身近な人間を亡くしているとか、分かりやすい動機が今後描かれるのか、もっと震災以降の東北の人たち一般の代表として描かれていくのかは分かりませんが、やはり「死」の概念が身近な主人公です。
「命を守る」に引かれる自分自身が「死」に近い(震災の日に何もできなかったことを自罰しているので)という、危なっかしいというか、現時点では「バランス」を欠いている主人公ですが。
「バランス」、つまり欠けた半身を補うための、「気象予報士」を目指した主人公の「跛行(はこう)」が始まる……というところで第2週は引き。
物語として、かなり面白い作品だと思います。
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めちゃめちゃ面白かった。2014年の登米と気仙沼! ちゃんとあらゆることが宮城県っぽい! #おかえりモネ
— 寂しいシロクマ(相羽裕司)/仙台市太白区 (@sabishirokuma) May 16, 2021
→前回:『おかえりモネ』第1週「天気予報って未来がわかる?」(第9回)(5月27日(金)放映分)の感想へ
→次回:『おかえりモネ』第3週「故郷(ふるさと)の海へ」(第11回)(5月31日(月)放映分)の感想へ
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