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 相羽です。

 『おかえりモネ(公式サイト)』第3週「故郷の海へ」(第14回)(6月3日放映分)の感想です。

 ネタバレ注意です。
 ◇◇◇

 東日本大震災の当日、百音は音楽学校の合格発表で仙台にいた。


 「東京」―「東北」


 という対照構造がある本作。

 この時は仙台ですが、当時の百音が夢見た「都会の音楽学校へいって夢をかなえる」という方向性は、進歩主義的・競争主義的で「東京」側の力学です。

 本作では、


 「東京」―「東北」


 の対照は象徴的に「木」で、


 ヒノキ―ヒバ(あすなろ)


 に写像されていますから。

 百音はいわば有能で広く役に立つ「東京」的・「ヒノキ」的な人間になろうとして、挫折した人間なのですね。

 くわえて、震災当日に気仙沼にいなかったために、亀島での被災の共有体験ができず、やっぱり「東北」だ、「ヒバ(あすなろ)」的な人間になるという方向へも舵を切りきれない。

 総じて、『おかえりモネ』は「東京」的・「ヒノキ」的な人間にもなれず、「東北」的・「ヒバ(あすなろ)」的な人間にもなれず、この世界のどこにも居場所がなくなった永浦百音という人間の跛行(はこう)を描いている作品なのですね。


跛行(はこう):つりあいがとれないまま進むこと。


 その上で作品タイトルが『おかえりモネ』なのは泣けます。

 どこにも居場所がなくなって、跛行の果てに百音は「おかえり」できるのか。

 これは、すごい主人公を考えたな……。

 吹奏楽を題材に「共同体」をテーマに描いた震災以降の作品としては、アニメ『響け!ユーフォニアム』もおすすめです。

 直接震災をあつかっているわけではありませんが、第1期が2015年放映で、京都アニメーションさんはあきらかに「震災後」の文脈を意識して作品づくりをされています。

 ここのブログでそのあたりを考察・解説した感想群を書いてますので、良かったらご一読頂けたらと。↓


参考:『響け!ユーフォニアム』の感想


 吹奏楽は「一人一人に役割がある上で全体で調和をなす」題材なので、震災後の壊れた「共同体」とその再生……といった事項を描くのに、相性が良いのでしょうね。

 もうひとつ、山本寛監督の震災後の東北三部作のラストである劇場アニメ『薄暮』も重要な比率で吹奏楽を扱っています。↓


参考:劇場アニメ『薄暮』の感想〜揺れる自同律と信じるにたるはずの日常への願い


 『おかえりモネ』は、この序盤でこの幼馴染たちが再集合するエピソードを描いているところをみると、だが、壊れなかった「共同体」って感じの作品でしょうか。

 今回で、一度仙台に出ても(「東京」の力学側にいっても)、やっぱり明日美の亮への恋心は変わらない……というのは前回の「1120年続いたお寺」と同じく、震災の前と後でも「変わらなかった」要素ですね。

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「響け! ユーフォニアム」Blu-ray BOX
黒沢ともよ
ポニーキャニオン
2019-03-20




→前回:『おかえりモネ』第2週「いのちを守る仕事です」(第13回)(6月2日(水)放映分)の感想へ
→次回:『おかえりモネ』第3週「故郷の海へ」(第15回)(6月4日(金)放映分)の感想へ
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