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 相羽です。

 『おかえりモネ(公式サイト)』第3週「故郷の海へ」(第15回)(6月4日放映分)の感想です。

 ネタバレ注意です。
 ◇◇◇

 2011年夏時点で、「違うよ、お父さん、音楽なんて、何の役にも立たないよ」と語る百音。

 物語序盤から繰り返されてきた、百音の「誰かの役に立ちたい」という動機は、作品トータルではポジティブなだけのものでもないのか。

 震災の日に音楽という夢を追って気仙沼にいなかった、何もできなかったことを自罰し、いわば代償行為として「役に立つ」に現在は惹かれている面があると。

 亮が語る「俺らは見てないけど、三生は見てただろうし」というのは、おそらく遺体のこと。震災の頃、お寺も含めたくさんの場所が遺体安置所になっていました。

 遺体、震災で亡くなってしまった人たちは、第8回(感想)でいうところの「切られた木」と重なります。

 しかし、第9回の感想で書いた通り、本作のメッセージは(切られた木も含めて)世界の全ての存在には意味がある。

 亡くなった人たちの「たましい」はきっと今を生きている百音たちにも力を貸してくれるはず、というような描き方をしています(そのいったんんとして、お祖母ちゃんの雅代は牡蠣に転生している)。

 「1120年前から続くお寺」は、1120年分の「たましい」が集まっている場所とも捉えられるので、その守り手になる(かもしれない)三生は思いのほか重要キャラクターです。

 これ、終盤百音が絶対絶命のピンチの時に、三生経由で1120年分の「慰霊」の力が百音に届く的な作劇じゃないですか。三生が勤行(ごんぎょう)し、時空を超えて百音に届く仏法パワー。すごい。これは、終盤まで観ないと。


 本作で描かれている「木」に関しても、


 ヒノキ―ヒバ(あすなろ)


 の象徴的な対照構造からすると、三生は「1120年続くお寺」要素を担うキャラという意味で、めっちゃ「ヒバ(あすなろ)」なキャラクターなのですよね。体型まで「ヒバ(あすなろ)」が連想される感じでどっしり感を意識してのキャスティングなのだとしたら、作り込まれている作品です。

 これで、三生のロックンロールストーリーが始まって、そのままロッカーとして結末をむかえたらどうしよう……。

 ラスト、「海風」に関して亮が「漁師は風向きと天気が必須」「龍己さんもそうでしょ」と語り、百音が「生まれ育った気仙沼」という要素と百音が見つけた新たな夢である「気象予報士」が繋がります。

 「気象予報士」は、歴史から切り離された刹那的なポっと出の夢ではなく、


●「気仙沼」という百音の故郷と繋がっていること、

●「龍己お祖父ちゃん」という百音のルーツと繋がっていること、

●震災で亡くなった方々、および「1120年続いたお寺」で守られているかもしれない幾星霜の「たましい」と繋がっていること、

●序盤で描いてきた、海、山、川、それをつなぐ水という自然と繋がっていること(亡くなった人たちの「たましい」と繋がっているということは、牡蠣に転生しているお祖母ちゃんとも繋がっているということだから。つまり、海、山、川は、失われた誰かの「たましい」と繋がっているかもしれず、八百万の万象と共に人は生きているという世界観。)、



 ……という位置づけに昇華しているのは感動的でした。

 作品としては、


 「東京」―「東北」


 の対照構造がある作品であり、「気象予報士の夢を追って東京に行く」はいっけん「東京」側の力学に行っちゃう感じなのかな……と思うのですが、

 この第3週で上記の事項を表現したため、「東京」に行ったとしても、「気象予報士」の夢は「気仙沼」と「歴史」と「慰霊」ともろもろと繋がっているものだ、というのが示されました。

 いわば、「東京」的なものと、「東北」的なものの縫合(ほうごう)。

 永浦百音は、震災を機に「東京」的なところにも、「東北」的なところにも適合できなくなり、世界のどこにも「居場所」がなくなってしまったのだけれど、「跛行(はこう)」しながら、万象(海、山、川、「たましい」など)を繋いでいく存在という、『仮面ライダーディケイド』みたいなキャラクター(え)なのでカッコイイですね。

参考:当ブログの『仮面ライダーディケイド』感想

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→前回:『おかえりモネ』第3週「故郷の海へ」(第14回)(6月3日(木)放映分)の感想へ
→次回:『おかえりモネ』第4週「みーちゃんとカキ」(第16回〜第20回)の感想へ
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