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 相羽です。

 『おかえりモネ(公式サイト)』第4週「みーちゃんとカキ」(第16回〜第20回)の感想です。

 ネタバレ注意です。
 ◇◇◇

 第4週「みーちゃんとカキ」は、「家(家族)」という多くの人にとっての「居場所」について描かれていたお話でした。

 繰り返しになりますが、永浦百音は、震災を機に「東京」的なところにも、「東北」的なところにも適合できなくなり、世界のどこにも「居場所」がなくなってしまったのだけれど、「跛行(はこう)」しながら、万象(海、山、川、「たましい」など)を繋いでいく……というキャラクター(主人公)です。

 第4週で描かれたのは三者三様の「居場所」について。


●百音

 永浦家という「居場所」ですが、母・亜哉子いわく「意地になってるみたい」の勢いで、妹の未知が現在守ろうとしています。

 家に自家製研究所みたいなのを築いている未知が漫画のキャラみたいでカッコいいのですが、牡蠣の「地場採苗」は、作品テーマ的にはポジティブなのかそうじゃないのか現時点では微妙な位置づけという印象です。

 海、山、川といった万象は巡り合い、それぞれに役割がある……的なお祖父ちゃんの語りからすると、石巻に任せられることは、石巻に任せてよい(無理に気仙沼で地場採苗しなくてもよい)、が作中解とも捉えられるので。


●三生

 1120年続いた実家のお寺という、三生の「居場所」のみならず、「慰霊」の意味も含めた1120年分の「たましい」の「居場所」について。

 第19回の冒頭で、百音、未知、亜哉子が、「お菓子」を題材に遊び半分の様子で、亡くなってるお祖母ちゃん雅代との「死者との対話」を行うのが印象的なように、明らかに「慰霊」が題材としてある作品です。

 死者のたましいにお経をささげる父・秀水の姿を見て、三生が何かを感じ、また旅立っていくところはけっこう感動的です。

 今週の大部分を主人公の百音と過ごしているのからも推察されますが、三生はどう考えても最重要キャラで、作劇に少年漫画のノリくらいなのも感じている本作だけに、物語終盤で百音が絶対絶命のピンチの時に、三生が数珠を持って仏法パワーで助けにきてくれる展開を今から楽しみにしています。


●亮

 父・新次が震災を機会に船と母・美波を(おそらく)喪い現在お酒に溺れており、物理的な「居場所」も仮設住宅と中々厳しい状況です。

 ここも、三生が亮はすごいみたいなことを言ってるんですが、作劇的には三生が亮の救いになる展開っぽいんですよね。

 永浦家では死者であるお祖母ちゃんとの対話があるけど、及川家では死者である(と推定される)母・美波さんとの対話がまだないのが、現時点では両者を分けてる感じで描いているかなと感じております。


 総じて、『おかえりモネ』は「旅」の作品で、神話的、物語的には、『ギルガメッシュ叙事詩』とか『西遊記』に近いです。

 この国および私には問題がある、よし、不死の霊薬を探しに旅に出よう!(『ギルガメッシュ叙事詩』)

 この世界および私には問題がある、よし、お経を求めて天竺への旅に出よう!(『西遊記』)

 のノリで、震災を機に世界にも私にも問題がある、よし、旅に出よう! というのが『おかえりモネ』であり、永浦百音という主人公です。

 ちなみに、『西遊記』に当てはめてみるなら、亮が沙悟浄で、三生が猪八戒といういう気がします(笑)

 第18回のラストで百音がひとり涙を流しているのは、やはり「居場所」がない……という表現と思われます。

 永浦家は温かいし、未知もがんばってくれているが、震災の日に気仙沼にいなかった百音には、「居場所」としてまだ「おかえり」できない。

 だから、百音は「旅」に出る。

 「跛行(はこう)」する。


跛行(はこう):つりあいがとれないまま進むこと。


 気象予報士になれば、お祖父ちゃんや未知の「役に立てる」と気づいてそっちの方向に「旅」に出てゆく百音が切ない。本当は、そんな等価交換でどうこうじゃなくて、役に立てるとか立てないとかどうでもイイくらいに、ここに「居場所」はあるのですが、震災の日を境にバランスを欠いている百音は、「役に立てる」を唱えて「跛行(はこう)」に向かわざるを得ない。

 「また普通に戻れるよ」は、まだ来ない。あるいはギルガメッシュ王や三蔵法師と同じような衝動で、欠けた何かを埋めるために、行くしかない。

 第4週ラスト、気仙沼を離れて再び「跛行(はこう)」の旅に旅立ってゆく百音。

 「跛行(はこう)」の中心となるであろう「東京編」は厳しそうだ。ひとりで旅立つのか……と思っていたところに、お母さんが後ろから追いかけてきてくれて、お祖父ちゃん・龍己の牡蠣を手渡してくれるところは感動的でした。

 牡蠣はお祖母ちゃん・雅代の転生体ですから。しかも、この世界観だと1120年の間に亡くなったかなりの方々も牡蠣に転生していそうです。

 今週で描かれていた「慰霊」の力。不死の霊薬にもおとらない神アイテムを、この時百音は母から受け取っているのです。このシーンは本当すごいな! 百音自身はまだ気象予報士としての知識とかなく最弱なんだけど、既に最強の神パワーは宿らせてる的なの、本当少年漫画とかの文法っぽい!

 「東京編」は大変そうですが。東京はもう「慰霊」っていうか、競争主義的というか、等価交換とかですからね(笑)

 その厳しい時に向けて、「慰霊」をともなう「おかえり」の場所を描き、三生が仏法パワーで駆けつけてくれる予感(え)を描きと、旅立ちの前段階のひとつを描いていた第4週。

 万物万象は関係し合っているとか、哲学的というか宗教的というか、そういう題材を震災後の2014年から始まる物語として描いていくという、相変わらず『おかえりモネ』さんはアグレッシブだな! と思いながら視聴していたのでした。

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