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 相羽です。

 NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人(公式サイト)』、

 第1回「大いなる小競り合い」

 の感想です。

 ネタバレ注意です。
 ◇◇◇

 鎌倉時代を描きながら、現代にも通じる「コミュニティ(共同体)」論をやりたいっぽいですかね。

 まず、「共同体」の最小単位を「家」と捉えると、初回の今回は北条「家」にまつわる起点となるお話です。

 「家」として成立していた北条家「共同体」に、「外」の世界から頼朝(佐殿)が貫入者としてやってくる。その結果、北条家「共同体」は否応なく変化を余儀なくされる。これが、第一話の基本的な流れです。

 主人公・義時の兄・宗時は頼朝をかついで平家を打倒すると気勢を荒げ、姉・政子は頼朝が好きになる。こういった事象は、頼朝をきっかけとした「共同体」の変化として描かれていきます。

 ここでは、北条家からみると「外」からやってきた頼朝自身がそれまで所属していた「共同体」からは排斥されることになった身の上である点が、「共同体」論的には大事なポイントになります。

 別に頼朝は北条家「共同体」を乱してやろう! とか悪意をもって無から生じて貫入してきたわけではなく、それまでの「共同体」にいられなくなったので、別の「共同体」、別の「居場所」に移らざるを得なくなった、という立場の人です。

 大きくは、京都(平家の勢力が強い)「共同体」から流人として伊豆へと排斥されてきた身ですし、今話的には伊東家「共同体」から排斥されて北条家「共同体」に流れついた身です。

 この、ある「共同体」から排斥された立場の人を、どのように受け入れていくのか? 彼・彼女たちの「居場所」は? というのは、現代(令和)の「共同体」にまつわる事象でも大事な視点です。

 ひとつのバッドエンドとして描かれていたのが頼朝と八重の子の千鶴丸(せんつるまる)で、「共同体」の力学の中で伊東家「共同体」から排斥される立場になってしまった結果、この世からも排斥されてしまいました(殺されてしまいました)。

 千鶴丸に、この世界に「居場所」はなかった。いったん排斥される立場となった千鶴丸を、受け入れる「共同体」はなかった。

 この、ある「共同体」から排斥された者をどうするのか問題とか、僕的には5年前くらいの京都アニメーション作品が題材としてよくとりあげていた事柄という気がするのですけどね。ついにNHKの大河ドラマでこの題材が扱われる時代となりましたか!↓


参考:響け!ユーフォニアム番外編「かけだすモナカ」の感想〜椅子に座れなかった存在への抱擁(ネタバレ注意)


 どこにも「居場所」がなくなって世界から排斥された千鶴丸の立場は、そのまま頼朝にもかかってくるのですが、ここで、頼朝の「居場所」として一人別格で描かれているのが政子です。

 他の面々が、主人公の義時も含めて源氏の嫡男であるという「役割」で頼朝をみており、頼朝をどう扱えば自分が交換として旨みを得られるかと「条件づけ」で頼朝を扱おうとしているのに対して、政子だけが「役割」を無効化し、「無条件」で頼朝を一人の人間としてみています。

 こ、こんな! 『響け!ユーフォニアム』における夏紀先輩のポジション(「共同体」から排斥される存在を守る者)として北条政子を描こうとするなんて!

 となると、主人公の北条義時のポジションは、北条家と伊東家を行ったり来たりといった描写が目立ったので、「共同体」と「共同体」の間を移動できる「境界領域者」のポジションかと思われます。

 『響け!ユーフォニアム』だと主人公の久美子のポジションですね。あまりにも突然引き合いに出されて『響け!ユーフォニアム』の例が全然分からないという方は(笑)、こちらの記事からよろしくお願いいたします(5000ユニークアクセス以上読んで頂けた当ブログの人気記事です)↓


参考:響け!ユーフォニアム最終回の感想〜ポニーテールと三人のハルヒ(ネタバレ注意)


 ラストは、消極的な動機ながらも「共同体」から排斥された存在である頼朝を政子が女装させ、主人公・北条義時がそれを守るように「外」へ駆け出すという絵です。

 そこからドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」がかかって、バーっとスケールがマクロになって、当時の日本各地の様々な大型「共同体」が出てくるのがカッコいい。

(作劇上、「家」のようなミクロな「共同体」と、これらのマクロな大型「共同体」は写像関係として位置づけられていると思われます。)

 平清盛の京都「共同体」・平家「共同体」はもちろんとして、木曽義仲はこの時はどういう立場なのかな? 何かの武士団なりを形成してすでに木曽義仲「共同体」をつくっているのか、この時はまだ少人数で潜伏してるくらいなのか。

 僕? 僕は東北人なので奥州藤原氏「共同体」推しですよ。

 藤原秀衡が出てきたところがいちばんテンションが上がりました。最後は、ここから武力・軍略・内政などなどで、大型「共同体」同士のバトルロイヤルがはじまるぜ! 的なノリなのですが、奥州藤原氏には、ぜひとも東北を中心とした黄金浄土「共同体」をつくってほしいですね! 歴史なので、結果は分かってるけどね!

 「土地(「共同体」の基盤)に命をかける鎌倉武士」が自然と題材になる作品で、なによりもまず「土地」を守るということを打ち出して鎌倉幕府をつくっていく頼朝を描く。

 その、大きな流れの中に、上述した「コミュニティ(共同体)」論が編みこまれていく。

 最近のリアルで岸田総理大臣とかが言葉にしている「新しい資本主義」とかは、イイかわるいかとかはいったん置いておいて、必然的に「個」にふれすぎた西欧文明よりの近代から「共同体」の価値や意味や位置づけを見直してゆく……という営みが大なり小なり含まれていったりするはずですから。

 鎌倉時代を題材にしながら、現代の諸事象とのリンクが意識されるような作品にしていく意図があるのかな、というのを感じた第一回だったのでした。

 おもむろに語ってみた京都アニメーションさんが描写してきたこれまでの(新型)「共同体」論は、『小林さんちのメイドラゴン』という作品と『響け!ユーフォニアム』という作品に特に顕著なので、興味がある方は、そのあたりの作品の感想記事からよろしくです。

 ちなみに、『小林さんちのメイドラゴン』ですと、今作の義時的な「共同体」と「共同体」の間に位置する「境界領域者」の立場のキャラクターは、主人公の小林さんとなります。↓

参考:パッヘルベルの『Kanon』のように「繰り返し」ながら「受容」の「共同体」は波打つように少しずつ豊かになってゆく〜『小林さんちのメイドラゴン』第5話の感想

参考:劇場版 響け!ユーフォニアム〜誓いのフィナーレ〜の感想〜精神的自傷者(奏)にかけられた旧型共同体の呪いを解く物語(ネタバレ注意)



歴史人 2022年2月号
ABCアーク
2022-01-06


→次回:『鎌倉殿の13人』第二回の感想〜「個」の政子と「共同体」の八重という対照の中で頼朝が全裸で本音をさらすのはまだ先の可能性がありそう(ネタバレ注意)へ
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