アニメ『機動戦士ガンダム 水星の魔女(公式サイト』第4話「みえない地雷」の感想です。
ネタバレ注意です。
引き続き「無条件の世界」と「条件付きの世界」の対照から本作を見ていってみます。
「条件」がどう本作のキーワードとなっているのか? という点については、第1話の感想に詳しく書いておりますので、そちらを参考にして頂けたらと思います。↓
参考:『機動戦士ガンダム 水星の魔女』第1話の感想〜「無条件の世界」による「条件付きの世界」への反撃の狼煙(ネタバレ注意)(追記あり)
今話の場合は、表面的に分かりやすいモロの「条件付きの世界」描写としては、「アーシアンかスペーシアンかという『条件』で人間をみる」というものがありました。
遅効性遮蔽スプレーをチュチュの機体(デミトレーナーチュチュ専用機?)に仕掛けた女性徒たちが「アーシアンに対する差別意識持ち」というストレートに「条件付きの世界」の住人であるのに対して、実はチュチュも、逆方向、「スペーシアンに対する差別意識持ち」の状態でスレッタにあたってしまい、彼女もまた今話前半では「条件付きの世界」の住人として描かれている……というところは面白かったです。
ここまでは表面的な対照の話で、ここから一気にギアが上がるのですが、もう一つ、裏の「無条件の世界」と「条件付きの世界」の対照の話として、
ラストの生の拳で殴り合って何だかスッキリする=「無条件の世界」
ガンド技術をはじめ身体拡張技術絡みの外の経済・政治・軍事の世界=「条件付きの世界」
……といった対照も今話では含意されてるんですよね。
あまりにもチュチュの拳、グーパンが生々しく描かれていますが、ある種の身体拡張技術が話のキーである本作において、「生の体の生の拳で戦う」はけっこうな意味合いが見出せます。
だから、最後は遅効性遮蔽スプレーをチュチュの機体に仕掛けた女性徒も生で殴り返してきて、何だかスレッタも巻き込まれて……というシーンなんですが、一見差別意識が前面に出て卑劣な遅効性遮蔽スプレーをチュチュの機体に仕掛けた女性徒たちがネガティブな印象を受けるんですけど、もう一層奥まで考えると、全体としては殴ったチュチュも殴り返した女性徒も、生の身体で「人間性」を全うしている互いにポジティブなシーンとも捉えられそうなのですよ。
ポジティブ、は言い方が違うかな。生の体での行為全般を肯定的に捉えるということ自体が、それこそ自然主義的に過ぎて良くないかもしれないこともあるわけで、もちろん本作はだから身体拡張技術は「人間性」がなくてダメだ、などという単純な作品ではありません。ガンドアームはじめ、身体拡張系のベクトルに位置付けられるであろうエアリアルとかは、むしろ主人公機ですしね。
それでも、生の拳での殴り合いになって、スッキリして何だか曖昧になって(再試験)、これくらいで全部の争いや闘争が幕引きできたらイイのにね……みたいなニュアンスを感じる意味で、ポジティブな印象のシーンです(モラトリアム空想空間的な「学園」だから生じ得た、「所有」や「取引」といった「条件」が発生する以前の野生のごとき生の殴り合いという「無条件の世界」に近い「場」の出現。)。外の世界(「条件付きの世界」)のリアルでは何故に、身体を拡張してまで本当に殺し合うところまで行き着かねばならぬのか?……という「闘争(戦争:経済戦争含む)」「人間性」「身体拡張技術」がセットで題材になってる本作的には今話は重要エピソードなのだろうなと感じる部分です。
「身体拡張技術」とかホルダーがどうこうという「決闘」の序列(階層)がなんだとか、そういったあらゆる表層が剥ぎ取られた時、最後に「人間」に何が残るのか? みたいな作品だと思うのですが。
僕は今のところ、それは「愛」っていう作品なのかなと感じております。
スレッタの「愛」の相手がミオリネなのかグエルなのか、他の誰かなのかまだ分かりませんが、とりあえず、「PROLOGUE」でのエルノラとナディムのバッドエンドから始まってる物語なわけじゃないですか。
「身体拡張技術」「経済戦争」、もろもろ翻弄される中で、最後にエルノラとナディムは愛を伝え合った。それは「人間」的だった。でも、ナディムは死んでしまった、というバッドエンド。
それを乗り越えるトゥルーエンドを描くなら、スレッタの愛の相手には生き残ってほしいのですよね。
だから、仮に相手がグエルだと仮定すると、最終局面でグエル機爆散。しかし、グエル全裸で帰還。生きていたのか、グエルぅ〜ッ! みたいなのが最高のバッドエンドをトゥルーエンドに塗り替える結びだと思うのですよね。
最後に残るものは何なのか、物語の進行と共に表層はどんどん剥がれていくので(今話ではチュチュのスレッタへの差別感情が剥がれた)、結末で提示されるであろう「何か」がとても楽しみな作品なのでした。
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『機動戦士ガンダム 水星の魔女』第1話の感想〜「無条件の世界」による「条件付きの世界」への反撃の狼煙(ネタバレ注意)(追記あり) : ランゲージダイアリー https://t.co/6t6vYZL8Oy …小説「ゆりかごの星」を読んだ上での作中の「母」要素に関する考察を追記しました〜。 #水星の魔女 #G_Witch
— 寂しいシロクマ(相羽裕司)/仙台市太白区 (@sabishirokuma) October 4, 2022
・ブログに書ききれない考察を「つぶやき」で展開しておりました。「トゥギャッター」さんにまとめさせて頂いていたので、よろしくです。↓
●『機動戦士ガンダム 水星の魔女』第4話時点での考察のまとめ/togetter
→Blu-ray
→前回:『機動戦士ガンダム 水星の魔女』第3話の感想〜たぶん後半でスレッタが(エアリアルにある?)「条件」から抜けるのを今話は先行してグエルで暗示として描いてたお話(ネタバレ注意)へ
→次回:『機動戦士ガンダム 水星の魔女』第5話の感想〜地球寮の皆やグエルという、親世代とは違うスレッタ代のプラスアルファが希望になり得るかもという初動の話(ネタバレ注意)
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