ライトノベル『我が焔炎にひれ伏せ世界 ep.1 魔王城、燃やしてみた(公式サイト)』第1巻の感想です。

以下、ネタバレ注意です。
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12年ぶりの角川スニーカー大賞受賞作。
自身の本質が、社会通念のようなものと相容れないとしたら? みたいな『空の境界』みたいな要素もある作品なのですが、異世界コメディとしての楽しさの方を押していた作品という印象です。
『空の境界』の式だったら殺人衝動、本作の主人公・ホムラだったら焼却衝動、倫理的にどうかと思われる本質的衝動だけど、それが自分という存在の本質的なかたちだったらどうするの的な話。
1巻は、死んで異世界まできて、ホムラが自分自身の本当の願望、「理不尽を焼き尽くしたい」に開花するまでという感じです。
最初は「人助け」みたいな無難なことを言ってるんだけど、最終的に違った、焼き尽くしたいだけだった! となるのがロック。
終盤である演出がなされながら、ホムラの自殺時の過去の場面の述懐が入るところは、同じスニーカー大賞受賞作連想で、『涼宮ハルヒの憂鬱』の「幼い頃に訪れた野球場」での絶望についてハルヒが述懐するくだりの、令和版という印象。
どうしようもない自分自身への無価値感と、理不尽な世界への絶望。……
……からの、本当の外道(1巻のラスボスであるが)に対して「理不尽を焼き尽くしたい」という本当の自分をついに解き放って炎殺を敢行するのがカタルシスが大きい。そ、そこは「白雪姫のキス」とかじゃないんだ。
途中までわりと普通の異世界ものっぽいけど……と思って読み進めてましたが、最後まで読むとやはり「大賞」だな、という謎のオーラを感じる作品です。
まだ魔王を倒してないので、そこまではぜひ続刊して頂いて続きを読みたい。
どうせ、魔王も炎殺するんでしょ? 読みたいですよ!
●当ブログの参考記事
→谷川流『涼宮ハルヒ』シリーズ感想/原作小説
→涼宮ハルヒの憂鬱アニメ版(映画『消失』含む)の感想インデックスへ
→考察:『涼宮ハルヒの消失』と『境界の彼方』との関係について(『境界の彼方』第8話〜第11話感想)
→奈須きのこ『空の境界』(原作小説)感想