樺沢紫苑さんの『言語化の魔力 言葉にすれば「悩み」は消える』を読みました。

これは、最近読んだものの中でもかなりの神本かもしれません。
ざっくりとは、人間であれば誰もが抱えているであろう「悩み」に関して、どういう風に解消に向かっていけばよいかという、精神医学的、脳科学的、心理学的な側面からの指南書みたいな感じの本です。
紹介されている、「コントロール軸」という概念は、使えるな! と思いました。
その悩みを解消していく方向で考えるとして、そもそもその悩みがどの程度あなたにコントロールできるものなのか、という視点。
それを、できる/できないの二項対立的にではなく、0〜100%の比率で見極めておく。
仮にコントールできる比率が0だとしたら、そのようなものは、そもそも解消に向かって取り組むこと自体が無駄。コントロールできる比率が10とか20とかの方に優先して取り組んでいった方がよい、という話になります。
たとえば、すごい攻撃的なパワハラ上司がいて職場の人間関係で悩んでいるとする。
その場合、視座を再設定して、たとえば、
・会社は嫌な時間だけど、会社の後の遊び時間を充実させる方に集中する
・勉強とか自分の成長に投資して、レベルアップした自分を見せることで上司の態度が改善する可能性は少しはある
とかにしてみます。
こっちなら、上司そのものを変えようとするよりは、あなたにコントロールできる比率は高いです。
で、こっちの方が充実してくれば、ま、上司とかどうでもいいや、みたいな心理になってくる可能性もあります。
これはもうほぼほぼ悩みが「解消」した状態で、筆者は悩みは、原因の除去は必ずしも必要なく、自分のコントロールできる比率が高い範囲のことを、「やれる範囲でやっていく」ことで自然と「解消」に向かう方向を目指すのがよいとしています。
こういう、僕的に「なるほど」感がある話が満載で、また僕的に「言葉」に注目している本である点もよい本だなと感じる部分です。
使う言葉を変えると、心も変わっていくというのは、言葉の専門家の立場からも本当で(忘れてる人が多いと思いますが、僕はもともとの専門は言語学なのです……)、心(感情)から言葉が生まれる方向ももちろんあるけど、言葉に引っ張られて心(感情)が動くベクトルも確実にあります。
その場合、ざっくりとはイイ感じの言葉を使っていれば、それに引っ張られて心(感情)もイイ感じになる、ということになります。
筆者が、ネガティブな想念にとらわれそうになった時に、そこから切り替えていくのによいとして紹介していた言葉「それはそれとして」は僕も使っていきたいと思いました。
「今日の仕事は最悪だった。それはそれとして、仕事が終わったこれから寝るまではなんか美味しいもの食べてなんか遊ぼう。」
みたいな使い方をしていると、日頃からの心身の健康度も上がっていくんじゃないかと思います。
現在何か悩みがあるという人に、広範囲におすすめしたい感じの充実の内容です。脳科学などのデータと著者の経験からの語りのバランスがちょうどよく、何度もなるほど! となる一冊でありました。↓