相羽です。
映画『君たちはどう生きるか』を観ておりましたので、感想も軽く書いておきます。
ネタバレ注意です。
映画『君たちはどう生きるか』を観ておりましたので、感想も軽く書いておきます。
ネタバレ注意です。
◇◇◇
◇◇◇
◇◇◇
最後の、かろうじて各現実世界（時代）の存立をギリギリのバランスで維持してくれていたらしいメタ世界＆大伯父（大叔父？）が粉々に砕け散るところ、イイですよね。
2023年版の、バルス。
メタ世界は砕け散った。
あとは、各現実世界（時代）で自分の足で歩いていくしかない。自分の世界をこの身にめいっぱい感じながら、友だち見つけたり、人生を全うしていくしかない。
もうメタ世界には頼れない不安と、あとは逆に解放感。
でも、メタ世界がまったく無意味だったのかというと、ラスト、異世界（メタ世界）から帰還した眞人の手にはメタ世界の欠片（かけら）だけ握られている、という表現になっています。
全く無意味だった！ 俺はこう死ぬ！ とまで振り切れなかった、宮��駿監督の未練のように感じます。人間らしいです。
ちょ、ちょっとくらいは意味があったら（現実世界に欠片のような影響として残ってくれていたら）って、感じだと少しだけ嬉しいんだけどね。べ、別に、どうしてもってほどじゃないんだけど！（ツンデレの様式） みたいな。
物語的には、コアの部分は主人公の眞人が異界での冒険を経て、喪われた母への気持ちに一区切りつける、というシンプルなもの。
異世界は、まさに僕が最近よく話している、「神話」的な「迷宮」の表現になっています。
「迷宮」に迷い込み、「迷宮」を抜けてひとつ成長する……という普遍的な物語のフォーマットですね。
「死」のにおいがしていた眞人が、異世界からの帰還を果たして物語が閉じる頃、少しだけ現実世界で生きていこうと思えるようになっている。物語の全てが、一人のもう向こう側に行ってしまいそうな人間をしばしこの現実世界へと繋ぎとめるための儀式（イニシエーション）。
ギリシャ神話だと、ミノタウロスの「迷宮」から英雄テセウスが「アリアドネの糸」をたどって出てくる話が有名ですが。
眞人にとっての「アリアドネの糸」がなんだったのか？
それが、時空を超えた母との「縁起の糸」だった、というのが感動した作品でした。
異世界が何だったのか？ 現実世界との関係は？ というのを、神話学や心理学（ユング心理学の集合的無意識の話とかですね）の視点も交えて考察したい気持ちもありますが、そこはまたの機会にしたいと思います。
大事なところは、「アリアドネの糸」、「縁起の糸」は母が現実世界で死んでも、メタ世界を経由して消えてはいなかったという部分。
「迷宮」から眞人を連れ出してくれる手がかりとなる「見えない繋がりのような力」として（ヒミ様という具体的なキャラクターのかたちにもなっていますが）、つらいこととかありつつ現実を生きてる眞人を孤立から救ってくれる大事な何かとして確かに存在していた。
母との「縁起の糸」を頼りに、「迷宮」を抜けて現実世界へと戻ってきた眞人の最初の方向性は、「友だち」をつくるということ。
異世界では、アオサギのような最初は敵対していた者とも友だちになれた。
何も「キラキラ友だち」みたいなのじゃなくてもイイのです。よくわからないけどイイ感じの「友だち」一人いたのなら、この現実に生まれてきたことにも感謝ができて、また、きっと楽しくもある。
メタ世界での、母との「縁起の糸」、「アリアドネの糸」といった類の超常的・抽象的な方向での「繋がり」と、地に足をつけてこの現実世界で「友だち」つくりたいなという方向の生っぽい「繋がり」と、二重の「繋がり」についての物語。
今では一笑にふされがちなことなのかもしれませんが、そんな「繋がり」があったらイイねと、心地よい気分で映画館を後にできる映画であったのでした。
→神話学の話などはこちらの本がおすすめです。
→あと、いわゆる南方熊楠の「南方曼荼羅」について少し押さえておくと、異世界と現実世界の関係とかはより分かる感じになるのではと思いました。
→『風立ちぬ』の感想へ
→『かぐや姫の物語』の感想へ
→『崖の上のポニョ』の感想へ
→『ハウルの動く城』の感想へ
◇◇◇
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最後の、かろうじて各現実世界（時代）の存立をギリギリのバランスで維持してくれていたらしいメタ世界＆大伯父（大叔父？）が粉々に砕け散るところ、イイですよね。
2023年版の、バルス。
メタ世界は砕け散った。
あとは、各現実世界（時代）で自分の足で歩いていくしかない。自分の世界をこの身にめいっぱい感じながら、友だち見つけたり、人生を全うしていくしかない。
もうメタ世界には頼れない不安と、あとは逆に解放感。
でも、メタ世界がまったく無意味だったのかというと、ラスト、異世界（メタ世界）から帰還した眞人の手にはメタ世界の欠片（かけら）だけ握られている、という表現になっています。
全く無意味だった！ 俺はこう死ぬ！ とまで振り切れなかった、宮��駿監督の未練のように感じます。人間らしいです。
ちょ、ちょっとくらいは意味があったら（現実世界に欠片のような影響として残ってくれていたら）って、感じだと少しだけ嬉しいんだけどね。べ、別に、どうしてもってほどじゃないんだけど！（ツンデレの様式） みたいな。
物語的には、コアの部分は主人公の眞人が異界での冒険を経て、喪われた母への気持ちに一区切りつける、というシンプルなもの。
異世界は、まさに僕が最近よく話している、「神話」的な「迷宮」の表現になっています。
「迷宮」に迷い込み、「迷宮」を抜けてひとつ成長する……という普遍的な物語のフォーマットですね。
「死」のにおいがしていた眞人が、異世界からの帰還を果たして物語が閉じる頃、少しだけ現実世界で生きていこうと思えるようになっている。物語の全てが、一人のもう向こう側に行ってしまいそうな人間をしばしこの現実世界へと繋ぎとめるための儀式（イニシエーション）。
ギリシャ神話だと、ミノタウロスの「迷宮」から英雄テセウスが「アリアドネの糸」をたどって出てくる話が有名ですが。
眞人にとっての「アリアドネの糸」がなんだったのか？
それが、時空を超えた母との「縁起の糸」だった、というのが感動した作品でした。
異世界が何だったのか？ 現実世界との関係は？ というのを、神話学や心理学（ユング心理学の集合的無意識の話とかですね）の視点も交えて考察したい気持ちもありますが、そこはまたの機会にしたいと思います。
大事なところは、「アリアドネの糸」、「縁起の糸」は母が現実世界で死んでも、メタ世界を経由して消えてはいなかったという部分。
「迷宮」から眞人を連れ出してくれる手がかりとなる「見えない繋がりのような力」として（ヒミ様という具体的なキャラクターのかたちにもなっていますが）、つらいこととかありつつ現実を生きてる眞人を孤立から救ってくれる大事な何かとして確かに存在していた。
母との「縁起の糸」を頼りに、「迷宮」を抜けて現実世界へと戻ってきた眞人の最初の方向性は、「友だち」をつくるということ。
異世界では、アオサギのような最初は敵対していた者とも友だちになれた。
何も「キラキラ友だち」みたいなのじゃなくてもイイのです。よくわからないけどイイ感じの「友だち」一人いたのなら、この現実に生まれてきたことにも感謝ができて、また、きっと楽しくもある。
メタ世界での、母との「縁起の糸」、「アリアドネの糸」といった類の超常的・抽象的な方向での「繋がり」と、地に足をつけてこの現実世界で「友だち」つくりたいなという方向の生っぽい「繋がり」と、二重の「繋がり」についての物語。
今では一笑にふされがちなことなのかもしれませんが、そんな「繋がり」があったらイイねと、心地よい気分で映画館を後にできる映画であったのでした。
→神話学の話などはこちらの本がおすすめです。
→あと、いわゆる南方熊楠の「南方曼荼羅」について少し押さえておくと、異世界と現実世界の関係とかはより分かる感じになるのではと思いました。
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