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 相羽です。

 今回は、先週末に公開された『機動戦士Gundam GQuuuuuuX -Beginning-(公式サイト)』の感想です。

 記事中では映画のラストまでの内容にふれています。完全なネタバレ前提で書いておりますので、まだ観てない方はご注意下さい。

 特に本作は事前情報に全くふれずに劇場で観た場合と、少しでもネタバレにふれてから劇場で観た場合の体験に大きい差が出るタイプの作品だと思われるので、まだ観ていない方はここでお帰り頂けましたらと思います。

 もう、観たという方だけ以下からネタバレありの感想をどうぞです。
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 シャアが赤いガンダムに乗ってジオンが勝利するという、イフ的・偽史的・仮想戦記的宇宙世紀については、


・スペースコロニーの回転
・時計


 など、「回転」「円」のモチーフがたくさん表現されていましたので、『機動戦士ガンダム』の本当の宇宙世紀から、時間が進んで宇宙が一巡して生まれてきた平行の歴史的なものとかかな(シャアの「時が見える」発言など)、と思ったりしました。

 シャアが「あの時の閃きが全てを変えた気がする」と言っているので、その閃きの時がいわゆるパラレル宇宙ものでの「ルート分岐」の時とか、理由づけは考察として色々楽しめそうです。

 ただ、こういう宇宙規模的なギミックも、より本作のコアである一瞬の輝きを際立たせるための、遠景としての舞台装置に位置づいてる作品であろうかな、という感想も同時に持ちました。

 色彩で、「白」を際立たせめるために多くの「黒」を塗るように、物語的には背景の「構造」が充実してるほど、登場人物の一瞬の「実存」がきらめきます。

 本作では、宇宙世紀がどうこうはバックにある「構造」であり、際立たせたいきらめく「実存」はアマテ・ユズリハというキャラクターであろうと思います。

 アマテ、「空って自由ですか?」って聞いたり、令和の、2025年を生きる現代人である我々も「分かるわ〜」って共感してしまうほど、物語冒頭では、「閉塞」を感じていて、「なんか自由じゃない」のですよ。

 そんな「閉塞」の中で「自由」じゃない彼女が、本当の空(自由)に向かって走り出すまで、というのが『Beginning』だと思いました。

 彼女に制限を加えて「閉塞」させようとするものは何重にも描かれていますが。

 たとえば(これはリアルの方の話ですが)宇宙世紀うんぬんとなんでも「文脈」にあてはめてジャッジされてしまう世の風潮かもしれないし、そんなジャッジをどこかでうかがいながら生きてしまうという、我々の矮小な部分から作り出されている圧迫感かもしれないし。

 彼女が生きる宇宙レベルでは、本当の空が見えない宇宙コロニーという場所的な「閉塞」かもしれないですし、社会レベルでは彼女が住むサイド6は今はジオンに支配されてる(政治的にももうちょっと複雑なのかもしれませんが)ということなのかもしれないですし。

 ミクロな(小さい)レベルでは、塾通いしてる彼女の現在の状況も、たとえば決まったルートに乗せられてる感的な不自由さを感じさせるものかもしれないですし。

 でも、そういう様々な「閉塞」に押し込められそうな環境な中で、彼女にも「個」としての自由な「実存」が、いわば「魂」があるんです。

 そして、『Beginning』時点では彼女が戦おうと思った動機として一番わかりやすかった部分だと思ったのですが、「どうせ難民どもの不法建築だ」って言ってMSが街を壊し始めた時、彼女は「怒り」を感じてるんですね。

 アマテ、不当、そこで生きてる一人一人の人間をないがしろにするような行為、そういうものに、怒ることができる子なんですよ。

 その「個」としての、「実存」としての怒りとか、しまっておけば無難だったのかもしれないのに。

 そもそも、ジークアクスに乗るのは不法行為だから、「閉塞」にフタをしたとしてもルール遵守してればよかったのに。

 それでも、彼女は「あっちの方が強そうじゃない」って言って、ジークアクスに向かって走り出していってしまう。

 上記した「閉塞」のもの全て、無効。どんな「構造」があろうとも、自由に焦がれるまま走り出す。この衝動は制限しない。この彼女が本当の空(自由)に向かって走り出すところが、最高にカッコよかったです。

 ここで挿入歌開始もめちゃめちゃ熱い。この挿入歌のアーティストさん、何者!?

 さらに、神話的には、アマテが古いモビルスーツの腕を走ってジャンプしてジークアクスに飛びうつるこのシーンは、まぎれもなくコテコテの「越境」の表現です。

 それまでの「閉塞」した自分から、ありのままの自由な自分への「越境」。脱皮。

 宇宙世紀うんぬんも「構造」と書きましたが、この宇宙が何周もしてるみたいな話も神話とか仏教とかにみられる話で、日本人的に馴染み深い概念だと「輪廻(りんね)」です。

 その「回転」、「輪廻」から外に出ることを「解脱」と言ったりして、人間はそれを目指すものみたいなのが仏教ですが(だいぶ、ざっくりとした説明ですよ!)、もう、宇宙世紀どうこうとか、そういう古い「輪廻」はいいからと。

 おまえは、今、どうしたいんだと。

 魂の声にしたがえと。

 この、ある種の怒りのような原初の自分の声にしたがって、宇宙世紀輪廻の運命とか、上記した「閉塞」の「構造」とか全部無化してPlazmaのようにアマテが走り出すところで、

 うわぁぁぁ! アマテ・ユズリハ好きだぁ! このキャラ好きだぁ! ってなるのすごい。まったく新しい作品の新しいキャラクターなのに、ここでこの子に走って行ってほしい! って思えるの、本当すごい。

 アマテもそうですが、じゃあ、宇宙世紀輪廻運命みたいなより上位的「構造」とかに影響とか受けてるかもしれないのに、我々はなんでこの世界に生まれいでたのか?

 ここは、個人的な感想ですが、誰かと出会うためだと思うのですよね。

 ありのままの魂のままで、誰かと共にこの世界でいっしょに楽しく過ごすため。

 シャアとシャリア、

 アマテとニャアン、

 アマテとシュウジ、

「マヴ」というキーワードで表現される人と人との関係が本作で大事なものとして出てきますが、ここで、やっぱりガンダム作品なんだなぁっていう、人と人とのコミュニケーションの要素がやっぱり入ってくるのですよね。

 そういう、「閉塞」を突破してでも、今回のこの世界でいっしょに過ごしたい相手、「時が見える」とかオメガ・サイコミュ的コミュニケーションとか別にいいから、今、この世界で目の前のあなたとしていっしょに生きていきたい相手、「恋愛」に全て回収されるのも今の時代うさんくさいから、そこで「マヴ」なのかなと。

 そういう意味で、宇宙世紀輪廻の文脈から続いてる運命の愛とかではなく、「マヴ」ってなんか軽くて明るい響きを感じて、そこがまたイイなって思ったのです。

 わりと長い、オジサンたちがかたい顔で考えたのか感もただよう偽史宇宙世紀的なパートが続いた後に、ビルの屋上の神域的な場所でアマテとニャアンが交流するところでとても今的な挿入歌! で、なんか、新しい風が吹いてきた! ってなるのですよね。

 うわぁぁぁ、アマテもニャアンも、シュウジも、みんな好きだぁ! となりました。

 といった感じの、僕としては「重さ」よりも、「重さ」を遠景にしながらも軽やかに進んでいくような、「軽い」「明るい」、「風」のようなものが前に出てきてるなと感じた作品です。

 こ、これが! 今度はTVシリーズで!?

 時代の最先端の「風」を感じる作品が、日本から生まれてるっていうのが(変に国粋主義的な意味とかじゃなくね)嬉しかったりもした、『機動戦士Gundam GQuuuuuuX -Beginning-』初鑑賞だったのでした。

TAMASHII NATIONS METAL ROBOT魂 機動戦士Gundam GQuuuuuuX <SIDE MS> GQuuuuuuX(読み:ジークアクス) 約155mm PVC&ABS&ダイキャスト製 塗装済み可動フィギュア(Amazonアソシエイト)

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 ガンダムシリーズ関係の文章を色々と書いております。

 5万人を超える方々に読んで頂きました。当ブログの代表的な記事です↓

『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』の感想〜三つの愛──無条件の愛、明るい愛、故人の愛(ネタバレ注意)

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 昨年Kindleストアの「映画」カテゴリで1位になった、『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』上映期間中にお届けした文章&音声で反響が大きかったものをまとめた電子書籍です。5万人に読んで頂いた「三つの愛」の感想記事&大人気のアスランとカガリの話をしたラジオ(書き起こし)などを収録。

 永久保存版のつもりで、僕の現時点の『ガンダムSEED』愛の全てを置いてきた文章作品となっております。タイミングが合いましたらよろしくです〜。↓

smilestoryblog
小さな言葉を重ねて〜『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』で笑顔になれた話

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 そして昨年末の冬コミ(C105)では『ガンダムSEED』への感謝を込めて同人誌(二次創作)を制作し、10年ほどぶりくらいにコミックマーケットにも参加させて頂きました。

 何年かぶりの新刊同人誌『料理人アスラン~闘争のブレードを料理の包丁に代えて最強の男が愛する人のために最幸の料理を作る』を制作しております。

ryourininathrunhyoushi

 当日はたくさんの方にスペースまでおこし頂き、本当にありがとうございました。

 こちらの『料理人アスラン』は基本コメディでちょっとイイ話! な明るいムードの本ですが、これも「自由に生きてよい」っていう話を書いたつもりです。

 とらのあなさんの方で委託もさせて頂いておりますので、タイミングが合う方はゲットして頂けましたら喜びます〜。↓


『料理人アスラン~闘争のブレードを料理の包丁に代えて最強の男が愛する人のために最幸の料理を作る』/とらのあな