
相羽です。
今回は、『機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス)』第8話「月に墜(堕)ちる」の感想です。
ネタバレ注意です。
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ニャアンの擬似母としてのキシリア。
料理を作ってくれたりするのですが……。
ミゲルのケーキ(毒殺のためだった)と同じく、今回、「ニャアンのために食べるものを作ってくれる」は、裏がある、ニャアンを利用しようとしていて人間として見ていないニュアンスがある描写として描かれています。
ニャアンに誰かが食べるものを準備してくれる描写は、第6話の運び屋のおじさんの時から続いてです。
ですが、あの時もニャアンはおじさんの娘の「代わり」で、キシリアにしろおじさんにしろ、マチュのお母さんのように「本物」ではなく、「偽物」の擬似親として、娘ポジションのニャアンを自分のエゴで利用してやろうとしている。そこに「無条件の愛」はなく、ニャアンはそれを敏感に感じとっている。
その上で、今話の最後に、キシリア(擬似母)は所詮ニャアンを利用しようとしてるんだけど(軍事利用したい)、マチュ母は「普通」だけど本当にマチュを愛してる(シイコも最後に坊やを思い出してるのでこっち側だったと思われる)。ニャアンは全部分かっててマチュを「本物」と言う。
ニュータイプだから「本物」というより、自分のルーツ(母)に愛されてるから、「本物」。切ない……。
ただ、第6話ではニャアンが、「食べ物」のテーマ的には、
「マチュとシュウちゃん、三人で食べたかったな」
と、零しています。
めずらしくニャアンが本音を言っていると思われる箇所で、ニャアンは実の親から「無条件の愛」でごはんを作ってもらうようなことはないのかもしれないけれど(あるいは死別してるのかもですしね)、マチュとシュウジでごはんを食べるのが、ニャアンの「本物」……っていうニャアンの回帰点になったりしたらイイなと思ったりするのですけどね。
そんな、ニャアンからすると、眩しいマチュは地球へ。
ここまでの話の流れだと、地球は作中で、「母」的で、「本物」的なシンボルです。
そこで、実の母に反発心を感じながらも(「普通」と評している)どこか愛してもいて、地球に惹かれているという現在のマチュが、ララァと出会って何を思うのか。
『ジークアクス』は、ゼロだと思ってたものがイチになり、イチだと思ってたものがゼロになる、容易に価値観が反転・転覆する(正史との連邦とジオンの勝敗のように)世界であなたはどうするのか。ゼロでもイチでも、回る交差点で(OPのニャアンのところ)どちらに向かって走っていくのか、みたいな作品なのですが。
どっちに向かって走っていくのかを最後は魂の衝動や主体性で選ぶにしろ、拠り所となる何かは描いてくれた方がありがたいかなとは思ったりもしてます。初代ガンダムのアムロの「帰る場所」みたいなものですね。
ララァは初代ガンダムではアムロの「帰る場所」とは逆の位置だった(遠い場所にいるのかもしれないけれど、ニュータイプ的には「ララァにはいつでも会いにいけるから」のポジション)彼女なので、ジークアクスの世界ではテーマ的にどういう立ち位置になるのか、かなり楽しみだったりします。
その上で、OPのラストではみんな同じ方向を向いて走ってるので、それほど全てが反転・転覆し得る混迷の世界で、一人一人が選んだ向かう方向が重なるなんてことは奇跡的なことだ……みたいな展開には期待してしまうところも。
今回も、(物語全体では)ニャアンの翳りのパートのようではあるのですが、彼女と境遇を同じくするエグザベくんが救いになり得るような含み(同じ方向を向いて走り得る示唆)もある気がするのですよね。
「マチュとシュウちゃん、三人で食べたかったな」
ニャアンの「帰る場所」が見つかるのかどうか、という物語でもあるように思うのです。
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『ジークアクス』の感想などは最近はnoteの方に先にアップしているので、よかったらよろしくです〜。↓
●相羽裕司のnote
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ガンダムシリーズ関係の文章を色々と書いております!
20年くらいブログをやっていて、いちばん読んで頂いた(5万人くらい!?)ブログの代表的な記事です〜↓
●『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』の感想〜三つの愛──無条件の愛、明るい愛、故人の愛(ネタバレ注意)
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前回:『機動戦士ガンダムジークアクス』第7話「マチュのリベリオン」の感想〜 フィクションでも気になる人でも、他人推しで相手が消えてしまったら私はどうするんだろう(ネタバレ注意)
前回:ジークアクスのマチュの好きなところ3つ(第7話時点)
次回:『機動戦士ガンダムジークアクス』第9話「シャロンの薔薇」の感想〜初代ガンダムで描かれていた「愛」についてようやくちょっと分かった(ネタバレ注意)
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