前回のS-DESTINY感想でdoingさんのおひまだ.net制作日誌から頂いたトラックバック、「ここでしかかけない、キラとラクスの話」を受けて、少々書いてみます。
 doingさんの言うように、前作を観て、アスランとカガリの関係は分かるのだけど、キラとラクスの方はあのようにくっつく関係に何故至ったのかがよく分からないという感想は、実はdoingさんだけではなく、前作放映時にWEB上で結構見かけたものでした。

 しかし、じゃあこの二人の関係は構築される過程が描写されずにすっとばされて、作者の脳内でデフォルト関係を作られてしまった、創作作品の人間関係描写としてはイマイチなモノだったのか(イマイチなモノの例としては、前サイトで書いたWJ漫画「BLACK CAT」のトレインとサヤの関係)?

 答えは、

 キラとラクスがあのような関係に至るまでの過程は、DVD最終巻の「星のはざまで」やスペシャルエディション「鳴動の宇宙」のTV未放映映像部分のフォローを受けてはいるものの、実は濃密に構築過程が描写されています。

◇ラクス→キラ

 まず、ラクスが何故アスランではなくキラを好きになったのか。こっちの方はわりと分かりやすくて、それはラクスが「キラはカテゴリーに依存せずに個人として行動できる人間だと、キラを買ったから」。

 この辺りは、前作SEEDのテーマは「脱依存」だったとしつこく語った僕のSEED感想があるんで、興味のある方は前サイトの僕のSEED感想を読んでいただけると嬉しいんですが、第1クールですでにラクスがキラを見出すきっかけのイベントがあります。

 キラは連合−ザフトのカテゴリーに捕らわれず、ラクスを個人的にアークエンジェルから逃がしてくれた。このキラの行動を、ラクスは強力に買います。これが、第3クールのラクスの行動の伏線にしてかつ、第1クールにあるラクス→キラ感情成立への仕込みイベントです。

 一方で第2クールではラクスがアスランから離れる第一歩の仕込みイベントがちゃんとあります。一時戦線から返ってきたアスランに対して、ラクス邸にて天然ボケのオブラートに隠れながらアスランがラクスが買うに足る人物かどうか探りを入れる場面が描かれます。ラクスの探りに対して、依存軍人としてのダメ返答しかこの時点では返せないアスラン。「あの人(キラ)好きですわ」とまで言ってみせるラクスの揺さぶりにも、アスランはラクスの思うような答えを返してくれない。この辺りで、ラクスはアスランではなく、キラに傾きはじめていたのではないでしょうか。ちゃんと段階を追って描かれています。

 そしてSEED屈指の名場面の第3クールのラクスとキラの対話。鏡のようにキラにキラの行動を跳ね返し、キラがラクスが買うに足る人物かどうかの最終確認をするラクスに対して、「ザフトでもなく、連合でもなく、何と闘わなければならないか少しだけ分かった」という趣旨のアスランは返せなかった答えを返すキラ、涙を流しながらそれでも戻ると返すキラ……ここでラクスは完全にキラを買います。ラクス→キラ感情の成立です。

 そしてその後34話でラクスはキラにフリーダムを渡し(最高の「君は誰?」の場面)、36話で「ザフトのアスラン・ザラ!」とアスランに最終勧告を叩きつけて、ラクスはアスランのもとを去ります。

 さらばアスラン、ウェルカムキラ。

 以上が、ざっと概観したラクス→キラ感情の成立過程描写です。第3クールがキモだったというのは、DVD最終巻の追加映像「星のはざまで」にて、「ラクスがどうして戦場に出たのか?」というカガリのSEED的に根本的な質問に対して、ラクスが

 「でもキラが 泣いていたのに それでも戻ると言ったので」(ラクス)

 と、SEEDのまとめ的に答えている点からも分かると思います。

 どうでしょう?結構、段階を踏んでラクス→キラ感情の成立は丁寧に描かれていたんじゃないかと思います。

◇キラ→ラクス

 もう少し分かりにくいのが逆に何故キラはラクスを好きになったのかなんですが、僕の解釈では、ラクスはキラにとって常にキラの存在肯定者でいてくれた、という点にあると思います。

 第1クール屈指の名場面、

 「でも あなたが優しいのはあなただからでしょう?」(ラクス)

 から始まり、まずは第1クール時にキラがナチュラルとコーディネーターの狭間で一番苦しんでいた時に、キラを存在肯定してくれた。ラクスの前でだけ、キラが泣くイベントがあります(逆にこのイベントが上述のキラがラクスを逃がすイベントのキラ側のモチベーションになっているのだけど)。

 そして第4クールでは、遺伝子進化の究極系として、アイデンティティロストに苦しんでいたキラにこれまた「泣いていいのですよ、だから人は泣けるのですから」と第1クール時とパラレルにラクスがキラを存在肯定し、ラクスの前でだけ泣くキラ……というイベントが描かれます。

 実はこの2点だけだとキラ→ラクス感情の成立には少々描写不足かなとも思ってたんですが、『機動戦士ガンダムSEEDスペシャルエディション完結編 鳴動の宇宙』では追加映像として、「クルーゼに突きつけられた事実の前に世界との関係性を失いかけるキラに対してラクスが世界との関係性を渡す」というキラ→ラクス感情成立にあたっての重要な追加イベントが描かれています(詳しくはこの前書いた『鳴動の宇宙』感想を参照)。この追加イベントにあたって、僕的にもキラ→ラクス感情成立に多いに納得。

 どうでしょう?こっちの方も追加映像の助けは借りつつも、結構段階を踏んで丁寧に描かれていたんじゃないかと思います。

 よって、僕的に前作SEEDでのキラ、ラクスカップル成立には疑問無し。そりゃDESTINYのアイキャッチでまで二人でクルクル回りますよという感じです。

 このような、人間関係に関する段階的な描写、それに伴う各キャラの変化、そして訪れる関係性成立、各々のキャラ間での帰結……このプロセスを描いてくれるのが僕がSEEDが好きなゆえんなんだよなぁなんて思います。

 DESTINYも楽しみにしております。

 よって、キラ−ラクスペアを真に理解するには『機動戦士ガンダムSEEDスペシャルエディション完結編 鳴動の宇宙』視聴が必須かと思います!

→HDリマスター版は「スペシャルエディション」のシーンを採用





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