佐賀大学附属図書館様が実施した、高校生が選ぶ「大学に入ったら読みたい本」アンケートの結果というものがあります。
1位の『ハリーポッター』を始め、ベストセラーがほとんどそのままで、お前らそれでいいのか?と思わず突っ込みたくもなったけど、おそらくは受験勉強などで忙しくて今の高校生は満足にベストセラーを読む時間も無いのかもしれないのかもなんて考えたら、ちょっと可愛そうになってきた。
僕自身が高校時代に同じ質問を受けたとしたら、当時すでに「言葉」に興味を持っていた僕はその道で当時の僕の知識内ではメジャーだった金田一春彦氏の本の名前なんかを挙げていたと思うけれど(当時は「言葉」の本ってこれくらいしか僕は知らなかった。今、「言葉」に興味を持つ高校生に僕が薦めるなら、最初からN.チョムスキー辺りが開拓した理論系の分野の入門書を読むように薦めるが)、大学も卒業した今となって、高校生諸君に大学に入ったら是非最初の内に読むといいと薦めたいのは、ズバリ、論理トレーニング系の本です。
色々あるけど、とりあえず僕が知るものとしては、野矢茂樹氏の『論理トレーニング 哲学教科書シリーズ』、『論理トレーニング101題』辺りが良いです(去年の僕が選ぶ和書ベスト5に入れた『無限論の教室』もエンタメチックでいいかな)。
理系の人は自然と論理トレーニングされる場合が多そうなんで(イヤ、よく知らないで言ってるのだけど)、特に文系で大学入った人or入ろうとしてる人。大学1、2年の内にこれらでトレーニングしてるかどうかで、その先に提出する諸々のレポート、卒論、さらには就職後のプレゼンテーションまで、まったくレベルが違ってきます。
というか、まっとうな大学、教師は、1、2年の内にこういうトレーニングが出来る書物を薦めるor実際にトレーニングをしてくれるものなんですが、まだまだ名ばかりの教養科目を1、2年次にテキトーにやらせてる大学もある模様です。ここを読んだ文系の高校生or大学1、2年次生は、もし自分の大学がそういう所だったら、騙されずに独自に論理トレーニング、説明力強化トレーニング(これも大事)を早めに積んで下さい。あなたの今後の人生にとってかなりプラスに働くんじゃないかと思います。
----------<私信>----------
ウチらの大学時代で言えば、1、2年次にT沢先生の授業を取ってこれらのトレーニングをしたかどうかが、言語系に限って言えば卒論が全国学会発表レベルまで行くか(僕のことね)、何気ないものに終わるかの分かれ目だったのではあるまいか。
---------<閑話休題>-------
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論理トレーニング101題
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で、次は話題を変えて、瑞希さんの所で話題になってる中学生に薦める本の話です。
これも自分を参考にすると、僕が中学生の時読んでたバイブルっていうと、
1、森絵都『宇宙のみなしご』
2、水野良『ロードス島戦記』シリーズ
僕が読んだのは高1の時だけど、中学生にもまあ薦められそうなのとなると、
3、三田誠広『いちご同盟』
4、ロイス・ローリー『ザ・ギバー―記憶を伝える者』
とかかなぁ。
1は既存のレール、価値観の方向性に疑問を持った女子中学生がそこからの脱出として深夜の屋根登りを始める話。
2は権力階級の階段を上っていって王様になるのが最高みたいな既存のヒエラルキー価値観を脱出して、最終的に「自由騎士」になる道を選ぶ少年が主人公の有名ファンタジー。
3はこの前紹介した通りだけど、日本社会の中学生に与えられた既存のレールから主人公がちょっとばかり脱出して、生や死、そして自分について考える話。
4はSFなんだけど、ユートピア世界にまみれて抹殺されてしまった大事な価値に主人公が気づき、最終的にユートピア世界を脱出する話。
な、なんか、こうしてみると既存のレールを脱出する話ばっかし読んでたんだな、僕。
そして、実際に大学卒業から企業就職へみたいなワリと今でも無標な既存のレールから脱出(つーか脱落?)して、個人での経済自立を目論んでる現在の僕。
そ、創作作品の力はあなどれないな!
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ロードス島戦記1 灰色の魔女
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皆さんの大学生になったら読みたかった(読みたい)本or今の大学生に薦めたい本、あるいは今の中学生に薦めたい本は何ですか?
(と、一応振ってみる)
北方謙三氏が自殺志願者の若者に読書の道を説いた有名な言葉です。何とも小気味いい台詞で、私も人からいい本はないかと聞かれたら、こう返答するようにしています。京極堂の言葉ではありませんが、この世にある大抵の本は面白いものですから。
それでも中学生〜大学生相手に自分の趣味を丸出しで答えるなら、以下の通りかなあ。
1、ローマ人の物語シリーズ(塩野七生)
2、銀河英雄伝説シリーズ(田中芳樹)
3、翼&全ての雲は銀の…(村山由佳)
4、旧約聖書を知っていますか(阿刀田高)
5、新約聖書を知っていますか(同上)
1,2は史実と架空の違いこそあれ、楽しい歴史の読み方を教えてくれます。
3は心に傷を負った人々の再生の話。同著者の天使の卵&天使の梯子も必読。
4、5は宗教に疎い日本人に、世界で最もポピュラーな宗教の一つであるキリスト教を判りやすく解説してくれます。