●「仲間」をキーに今週のD.Gray-manとONE PIECEについて

 下の今週のD.Gray-man感想で、前振り不十分なゆえにリナリーの口から出る「仲間」という言葉が唐突な感じがしてしまうのが惜しいなんてことを書いたのだけれど、そういうこと考えるとやっぱONE PIECEはスゴい。

 尾田先生がいくつかの場でONE PIECEのテーマの一つは「仲間」と言明してるんで、それをテーマに描き続けてスーパービックタイトルとして長期にわたり君臨しているONE PIECEと、新人、新規連載で始まったばかりのD.Gray-manを比べているんであたり前と言えばあたり前なんだけど、やはりONE PIECEはスゴい。

 アラバスタ編のクライマックスとか、「自分の目的のためには仲間の一人や二人は切り捨てるものだ」というクロコダイルの主張に対して、ルフィが答えた場面とか激燃え。

 「……だからお前はわかってねェって言ったんだ…ビビは…あいつは人には死ぬなって言うクセに…自分は一番に命を捨てて人を助けようとするんだ……放っといたら死ぬんだよ お前らに殺されちまう!!」(ルフィ)

 「――わからねェ奴だ…だからその厄介者を見捨てちまえばいいとおれは…」(クロコダイル)

 死なせたくねェから "仲間"だろうが!!!」(ルフィ)

 表面的な言葉の列、意味合いは今週のD.Gray-manのリナリーの「仲間だからに決まってるでしょ…!!」と同じだけど、ONE PIECEの方は十全にいくつものイベントでビビというキャラが描写されており、それを見ているルフィというのが描かれていた。そこで十分にタメにタメておいて、クライマックスにて初めてルフィがビビをどういう風に思っているかを明示的に語らせるという演出。そこで飛び出す「仲間」という言葉。

 やはり同じ「仲間」という言葉で感動を演出していても、そこまで持っていく伏線の張り方、タメの置き方、最後に「仲間」の言葉を出すシチェーションの演出、その辺りを丁寧にするだけで、言葉の重み、その言葉から読者が受ける感動指数がだいぶ違ってくるなと思いました。

 とにもかくにも、ONE PIECEはやっぱスゴいなと、そういう話です。

●DEATH NOTE

 ライトのDEATH NOTE所有権放棄以来、読者の一つの楽しみに、果たしてライトはノートが再びライトのもとに戻るように計算づくで動いているのか、それとも素で白ライトになってしまったのか、一体どっちだハラハラというのがあったと思うんですが、今週号でレムの口から意外にもあっさりとライトはノートが戻ってくるように計算していたことが明らかに。そこんとこは最後の最後まで伏せておいて、黒ライト復活時に実は計算づくでした、ババーンみたいなミステリのサプライズラストみたいなのを見せてくれるのかなーというのを期待していた僕としては少々残念だったり。

 というか、改めてこの漫画にミステリ的な楽しみをあんまし求めちゃいけないと再確認。頭脳戦のバトルエンタメなんだよな。ミステリ的サプライズラストとかは特に狙わず、今後も計算ずくのライトが勝つか?計算外の行動(手錠とか)などでLが勝つか?といった拮抗したバトル視点で楽しめるバトルエンタメを描いていってくれるみたいです。それはそれで楽しいんで全然OKなんですが、黒ライト復活サプライズ見たかったなーと未練がましく……(確かにあまりに美しく黒ライト復活しちゃうと黒ライトの完全勝利でこの漫画終わっちゃうんですが)。サプライズっていうほど急激にではなく、徐々に黒ライトに戻るまでのプロセスを小分けにエンタメ演出で見せていく形になるのかなー。

●ムヒョとロージーの魔法律相談事務所

 実は期待しています。
 欲を言えば「未確認少年ゲドー」に残って欲しかった所ですが、「ムヒョとロージーの魔法律相談事務所」も、最初にネガティブに描かれていた幽霊が実は結構純粋なヤツだったり、逆に良さ気だったヒロインに責任の一部があったりと、最初に誤認された怪奇を描いておいて、それを主人公が解体していくタイプの、ゲドーと似た物語です(幽霊の怪奇の部分が、ゲドーでは未確認生物の怪奇にあたる)。
 WJ的人気ばかりを狙っていくと全てのWJ漫画がバトルものになってしまいそうな中で、敢えてこういうタイプの話を描いていたというのもゲドーが好きだった理由の一つなので、同タイプ(多分1話完結型という点も同タイプ)の「ムヒョとロージーの魔法律相談事務所」には素直に期待しておきたいと思います。ポストゲドーなるかなぁ……。