「その前に、一つ教えて欲しい」穂瑞は、相理さんをはじめとする、作れない派の顔をじっと見つめた。「我々がここにこうしているのだから、ここに最低、一つの宇宙はある。誰が作ったか知らないが、恐ろしく頭のいい奴だろう。意外とクールな奴かもしれない」

 「宇宙とは人間に作れるものなのか?」

 この究極の難問を解くには、宇宙の原理を、神のパズルを解かなければならない。挑むのは不登校の天才美少女と留年寸前の落ちこぼれ学生の「僕」。対話を重ねながら神のパズルに立ち向かう二人が最後に辿り着いた答えとは?

 と、大まかなあらすじだけで心を鷲づかみにされて購入した一冊。いやね、もうスゴイ。燃え狂いました。

 燕。さんの紹介記事を見て読んでみたんですが、とんでもない一冊を紹介されてしまいました。新年一月目から、強烈にヒット。去年読んでたら去年の活字部門ベストが入れ替わってたのでは……という勢いです。

 創造主に挑む。

 ありがちな話なんですが、何故にこうも燃えるのか。これはきっと普遍的に人間が持ってしまっている一つのサガ。

 ファンタジーな世界を舞台にはよく描かれる話なんですが(創造主がラスボスだったりね)、現代劇で、物理学を通して素でこの宇宙を作った創造主に正面から人間が挑む物語を描いたこの話は熱すぎます。

 創造主の作中での呼称は「彼」ですが、これは村上和雄氏の諸論評では「サムシンググレート」なんても呼ばれてる概念で、現代の物理学、生命科学なんかでも言及されることしばしば。そういう書籍も色々と読んでいた僕としては、ちょっとハマり過ぎ

 というか、僕もアカデミックに生きてた頃は、「どうして人間言語の根底部分はこうも美しく設計されているのか?」と「彼」のパズルに挑んでるふしがあったので、自分の経験上からも、僕、主人公達に感情移入し過ぎ

 最終的に、落ちこぼれだった「僕」が天才少女穂瑞と共闘しながら神のパズルに挑む日々を通して「保障論」という一つの卒論を書く所で帰結してるんですが、そこに至るまでを「理論物理学」と「農業」という一見相反する属性の素材の対比構造を通して描いているのがステキです。農業ですよ、田植えしたりするんですよ。全然神のパズルを解くのに関係なさそうなのに、最後にピタリと収束しているのが美しい。

 また、キャラ萌え、というか穂瑞燃えで読めちゃうのもお得な一冊。プログラミング能力デフォルト実装の天才少女です。『星虫』の氷室友美とか、『ステルヴィア』の片瀬志麻とか好きだった人にはお薦めかも。

 そんな感じで、今年最初のディープにお勧めしたい一作でした。




神様のパズル
機本 伸司
角川春樹事務所
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 以下、ちょっとだけネタバレ感想。続きを読む